不登校の小・中学生が過去最多の34万人超(2023年度 文部科学省の調査)となるなど、全国的に問題となっている。そんな中、増加傾向にある東京都では2025年4月、新たに7校目となるチャレンジスクール「都立立川緑高校」が開校となる。

2025年4月に開校する、7校目のチャレンジスクール「都立立川緑高校」
2025年4月に開校する、7校目のチャレンジスクール「都立立川緑高校」
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「チャレンジスクール」とは、小中学校で不登校を経験した生徒や、長期欠席が理由で高校を中途退学した生徒を支援する都立高校だ。既に6校設置されているが、この度開校する立川緑高校には応募が殺到し、最終応募倍率が都立高校全体のトップ3となったという。
一体どのような特長があるのか、取材した。

JR西国立駅から徒歩12分、真新しい校舎には、最新装置が完備された視聴覚室や図書室がある。体育館は地下2階から地上2階まで吹き抜けの構造となっている。

地下2階から地上2階までの吹き抜け構造となっている体育館
地下2階から地上2階までの吹き抜け構造となっている体育館

この立川緑高校に2025年度の応募が殺到し、最終応募倍率は都立高校全体のトップ3となる2.55倍。チャレンジスクール全体の平均倍率が1.46倍であることをみれば、どれだけ人気が高いかがわかる。

その理由について校長の石田和仁さんは、「新設校の説明会を相当数実施してまいりました。中学生や保護者の方々がうなづいてくださる場面が非常に多く、我々の取り組みを共感していただけたのかなと思っています」と話す。

服装・校歌・体育祭・文化祭…生徒の自主性に任せる!

入試は、学力検査や中学校からの調査書に頼らず、面接と作文で選考される。
2025年4月から入学するのは約170名。不登校経験者や高校中途退学経験者など、高校をきっかけにやり直したいという生徒も含まれているという。

スクールミッションは、「生徒が学ぶ楽しさや意義を見出し、自信や意欲を身に付け、社会の一員として自らの力で未来を作り出すことができるよう育成する」と掲げている。

大きな特色の一つは、生徒の自主性を尊重する点だ。
標準服・制服はなく、学校での服装は、生徒自身で決めてもらう。そのため4月の入学式は、制服なしでスタート。その後もし生徒から制服がほしいという意見があれば、生徒会活動を通して制服を導入することも考えている。

最新装置が完備された図書室
最新装置が完備された図書室

体育祭や文化祭などの学校行事も、生徒が企画したものをなるべく実現させていく。そして、校歌も生徒に作ってもらう予定だ。

生徒と音楽の先生とのプロジェクトチームが作詞と作曲をし、11月21日の開校記念式典に発表する計画だ。

まさに、自分たちの学校は自分たちで作る、というコンセプトが実践されている。

まるで大学?CG制作にゲーム概論など履修科目も選択

授業内容も、介護、福祉、アートデザインなど生徒の関心に合わせて自由に学べる。

卒業までのカリキュラムは、自分で履修科目を選べるほか、必修科目も卒業までに履修すればよいなど、大学に近いイメージだ。中学で不登校だった生徒向けには、学び直しができる授業も受けられる。

そのほか、化粧や身だしなみなど美容の基礎を学ぶ授業や、フラダンス教室、CG制作、授業、情報システム、コンテンツ制作、動画配信、ゲームはなぜ楽しいのかを研究するゲーム概論も選択できる。

「不登校問題は統計だけで考えてはいけない」社会体験活動も単位に

社会につながるための社会体験活動も単位として認められる。

ボランティアやインターンシップのほかに、一定の条件をクリアすれば社会体験活動(アルバイト)も単位として認定される。

「不登校の問題は、統計だけで考えてはいけないと思っています。不登校の生徒1人1人、それぞれが違う理由であったり、背景があったりする」と、石田校長は話す。

都立立川緑高校 石田和仁校長
都立立川緑高校 石田和仁校長

都立立川緑高校 石田和仁 校長:
効率性が求められる今の時代に、失敗に対して寛容であったり、自由な発想でチャレンジする姿勢を大事にする学校でありたい。特に力をいれたいのが、文章で自分の考えを表現するプログラム。文章表現を通じて、自己分析をし、自己肯定感を高めてもらいたい。

校内には“居場所カフェ”など、都内のチャレンジスクールで実施されたこれまでのノウハウが活用されている。

新しい学校の在り方が問われる中、立川緑高校がまもなく入学式を迎える。

(取材・執筆 フジテレビ社会部 大塚隆広)

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。

社会部
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