2026年4月の開始予定となっている公立小学校の給食費無償化について、全国の自治体が困惑している。突然、自民党などが、“費用”を国と都道府県の『折半で負担』と提案してきたからだ。全国の自治体トップが反発を強めているが、実施まで数カ月と時間もない。果たして、全国すべての自治体で、給食費は無償化されるのだろうか。
全国の知事が反発『国との折半』
2025年12月11日。福岡県の服部知事もオンライン参加した緊急の全国知事会。議題は、新年度からスタートする予定の『公立小学校の給食無償化』について。
自民、日本維新の会、公明の3党が、突然、『負担は国と地方自治体で折半』との提案があったからだ。

「知事会のせいにされて、私たちが悪者になる構造に最初からなっている」「給食費無償化と、大変、耳障りの良い政策で、これを国として言ったのであれば、財源も含めて手当するのが筋論」などと、冒頭から各県の知事から怒りと批判の声が噴出した。

福岡県の服部知事も「私も、この進め方については、大きく問題があると思っている。給食費の無償化は、国の重要政策であり、国が費用の全額を負担することが大前提」と、強く異を唱えた。
地方交付税?財源が不透明
福岡県内の公立小学校の給食費の総額は、概算で140億円ほど。自民党など3党は、「都道府県の負担分は、地方交付税で措置する」としていて、実質的な負担はないとされている。

しかし、知事会からは、「交付税措置というが、交付税の項目を追加されるだけで、裏打ちがないようなことも結構、多い。突然、県に対して求めるのであれば、別枠でしっかり交付税の財源を確保すべき」と、地方交付税の実現性に対する懸念の声が上がった。

福岡県の服部知事も「交付税で措置するというのであれば、措置の額などについて明確に。また、その算定については、きめ細かく行われるべき」との考えを改めて強調した。

物価高騰でデータが実態と乖離
一方、給食無償化を巡る懸念は、福岡県内の自治体からもすぐに上がった。「今、古賀市では、月に保護者の皆さんから4600円ほどの給食費を頂いている状況。ただ実際は、物価高なので、プラス1000円以上費用が掛かっている計算になる」と古賀市の田辺市長は厳しい実情を語る。

一方、今回の無償化案で、自民党などは、2年前の『給食費調査』を根拠に、1人あたり月額約4700円を支給する方針で、古賀市のような自治体の上乗せ(負担)分は、考慮されていないとした上で「今、国が全国平均として4700円という額は出しているが、実態とは、かなり乖離している」と田辺市長は、そもそものデータが現実に即していないと苦言を呈した。

現在、福岡県内で「給食無償化」を実施している自治体は、福岡市、大野城市、宮若市など「19自治体」と、全体の3分の1。見方を変えると、県内の3分の2の自治体が、まだ無償化に踏み切れていないのが現状だ。
このまま『地方も負担する形』で、4月の無償化となると、特に、無償化を経験していない自治体にとっては、残り3カ月ほどで自前の予算で無償化に対応する必要が出てくる可能性がある。
県内のある自治体の担当者は、「物価高の影響で2026年度の給食費は、更に上がる見込みだが、財源が見通せない。現場が混乱するので早く枠組みを示してほしい」と頭を抱えていた。

地方からの批判が噴出する中、高市首相は、12月12日、改めて給食無償化の2026年4月開始に向け意欲を見せた。一部では、保護者の負担も残るのではとの懸念も燻る中、果たして、自前の財源が乏しい小さな自治体でも給食の無償化実施が予定どおり可能なのか?

地方の担当者はもとより、子供を抱える保護者からも、「自分の街は本当に無償になるのか?」不安の声が上がっている。
(テレビ西日本)
