2025年11月、12年半の現役生活に幕を下ろした大相撲元小結、遠藤の北陣親方が、石川県小松市内でトークショーを行った。その後、石川テレビの単独取材に応じ、現役引退後の心境や親方としての抱負、そして地元石川県穴水町への思いを語った。
悔いのない引退と親方としての新たな出発

「悔いなく引退しましたので、すっきりもしていますし、これから親方として一から教わって学んでいくことが多いと思うので、また気を引き締めてこれからやっていきたい」と北陣親方は穏やかな表情で語った。

現役時代の遠藤関といえば、端正な顔立ちと技巧派の相撲で「貴公子」と呼ばれ、多くのファンを魅了してきた力士だ。その彼が今、親方として新たな人生のステージに立った。

11月に行われた九州場所では、土俵につながる花道の警備を担当した北陣親方。これまでとは違う視点から相撲を見ることになったわけだが、その感想を次のように述べている。

「稽古はずっと相撲を始めた頃から引退するまで、きつくて辛くて嫌いでしたが、相撲自体は本当に好きなので、そういった贅沢な場所で、相撲を直接、生で客観的に見ることができて、すごく勉強になりました。」

力士としての日々は終わったが、相撲への愛情は変わらない。むしろ、土俵の上ではなく客観的な立場から見ることで、新たな発見があったようだ。これからは後進の指導に活かしていくことだろう。
故郷・穴水町との絆 ー 避難所訪問

去年2月、能登半島を襲った地震。その際、北陣親方(当時は遠藤関)は故郷である石川県穴水町の避難所を訪問した。現役の大相撲力士の姿は、被災した地元の人々に大きな勇気を与えた。

しかし北陣親方によれば、実は逆に自分が元気をもらったという。

「みなさんが前を向いて、少しずつ元の日常に戻るんだという気持ちが伝わったので、元気を与えに行ったつもりが、逆に元気をもらったと言いますか、前向きになるきっかけになりました。」

被災地の人々の強さに触れ、むしろ自身が勇気づけられたという言葉からは、地元への深い愛情が伝わってくる。
故郷への恩返しの思い

インタビューの中で、北陣親方は穴水町をはじめとする地元の人々への感謝の気持ちを何度も口にした。長い現役生活を支えてくれたのは、故郷からの応援だったと振り返る。

「故郷に対しては、現役中、たくさんたくさん声援をいただきまして、感謝してもしきれないぐらい支えていただきましたので、そういったことを恩返しできるように、現役中もそういった気持ちで取り組んではいましたが、さらに親方になっても変わらず取り組んでいけたらなと思っています。」

親方としての道を歩み始めたばかりの北陣親方だが、故郷への恩返しの思いは変わらない。これからも地元石川県とのつながりを大切にしながら、相撲界での新たな役割を果たしていくことだろう。

北陣親方の新たな挑戦は始まったばかりだ。稽古は嫌いだったという彼だが、相撲そのものへの愛情は深い。その思いを胸に、親方としての道を一歩一歩進んでいく。地元石川県の人々も、そんな北陣親方の今後の活躍に大きな期待を寄せている。
(石川テレビ)
