日本列島が今季最強寒波の影響で真冬の冷え込みとなる中、本来冬眠し始めているはずのクマによる被害が続いている。
「Mr.サンデー」は2つの被害現場で“越冬グマ”の脅威を取材した。
冬眠しているはずのクマが…
今季最強寒波の影響で、5日にかけ大雪に見舞われた列島。
青森県酸ヶ湯では、積雪106cm。
長野県の北部では大雪警報が出され、関東各地も銀世界と化し、真冬の冷え込みとなった。
そんな中で相次いだのが、本来、冬眠し始めているはずのクマによる被害。
岩手・奥州市の男性:
雪降る時はもう冬眠になるからね、普通は。ちょっと異常ですよね。

長野・野沢温泉村の女性:
(雪の上でも)速い!すごく素早い。「あーっ」ていう感じであわてて。
Mr.サンデーは、2つの被害現場を取材、真冬になっても人を襲う“越冬グマ”の恐ろしさを目の当たりにした。
ディレクター:
午前6時半ごろ、78歳の男性がこちらで雪かきをしていたところ、クマに襲われたということです。
長野・野沢温泉村の雪上には血痕が残されていた。
4日木曜日の朝、温泉街で飲食店を営む男性が、雪かきをしていたところ、背後からクマに襲われた。
救助した人に話を聞くと…

クマに襲われた男性を救助した人(5日):
いきなり後ろから覆いかぶさるように襲ってきたって。出血がひどかったんで、「寒い寒い」って言い始めたんで、あわててうちの毛布を取りに来たり。

クマに襲われた男性を救助した人(5日):
このへん(頬)がひどかったですね。目の下の辺りと左側の頭が。顔面の止血をして。
男性は顔を引っかかれ、左の太ももに4カ所かまれた痕があったという。
雪かき中にクマが出没
番組では、襲撃直前のクマを捉えた防犯カメラ映像を独自入手した。
ここは、近くに小学校や役場もある場所。
午前6時35分ごろ、雪かきの道具を持った男性が、画面左へ…。
そのわずか17秒後、まっさらな雪の上にクマが!

雪の上に現れたクマは走り出すと、一瞬、ポールにしがみつき男性と同じ方向へ駆け出した。
これは、その先にある防犯カメラ映像。
左端に先ほどの男性が。その時…

雪かき中の男性:
おぉ クマ クマ クマ!おーい

雪かきをしていた別の人が、男性の方へ歩いて行くと、そこへクマが突進してきた。
クマと遭遇した人:
すぐここ行ったよ。
ディレクター:
ーーえっ、真横だったんですか?

クマと遭遇した人:
すぐそこ来たから「あークマだ!」って言って、息子と2人でスノーダンプ(除雪器具)持って動かなかったんだ。

とっさに雪かきの道具を体の前に立て、身動きを取らずにいると、クマは素通り。
そのまま、住宅の間を走り去っていった。
しかしその後、クマは県道を渡り、約230メートル先で、雪かきをしていた78歳の男性に背後から襲いかかった。
男性の命に別条はないというが、地元の人は、積雪の時期だからこそのクマと遭遇する恐ろしさを感じていた。

クマに襲われた男性を救助した人:
(雪かきをしていたら)気づかない。集中して雪を見てる。

野沢温泉村猟友会・長谷川竜也会長:
雪かきのスコップの音で周りの音も聞こえなくなったり、クマみたいに足音がほぼないような状態で雪が積もっているので。

雪の上では、クマの足音には気づけない。
目視できれば身構えもできるが、視界の外から突然襲われると、対応は難しいという。
さらに、クマの生態にくわしい岩手大学農学部・山内貴義准教授に話を聞くと…。

岩手大学農学部・山内貴義准教授:
クマも本来であれば、どこか草やぶとか隠れたいところなんですけど、一面積雪になって見通しが良くなるので、「やべえ、やべえぞ。隠れる場所ねえぞ」みたいなパニックにはなりやすいと。襲われるリスクってのは高まると思います。

クマは、足の肉球や爪が滑り止めとなり、雪の上でも素早く動けるという。
“越冬グマ”は岩手・奥州市でも…ドローンで追跡
この時期になっても冬眠せず、雪の中でも活動を続けるクマの脅威。
それは岩手・奥州市でも…。
被害女性の兄:
顔を下に引っかかれてね。鼻の骨が折れて血だらけになって戻って来ちゃったからね。「クマにやられた」って。

4日木曜日午前6時半ごろ、60代の女性が、逃げた飼い犬を探して足跡をたどっていたところ、自宅からわずか150メートルほどの路上で突然クマに襲われた。
その後、クマはどこへ行ったのか?
Mr.サンデーは、ドローンオペレーター協力のもと、温度を感知できる赤外線カメラでクマの居場所を探った。
八伸建設HS・DRONE ドローンオペレーター:
そっちの方に茂みがあるでしょ、おうちの方に。もっと左。俺が左にすればいいのか。見える?
八伸建設HS・DRONE ドローンオペレーター:
確認OKです。

被害現場の周辺から、クマがいそうな茂みを中心に探していく。
そして、日が暮れたころ…
八伸建設HS・DRONE ドローンオペレーター:
あッストップ!上、上、上!

ディレクター:
クマの形してます。
八伸建設HS・DRONE ドローンオペレーター:
クマです。クマだ。

女性が襲われた場所からわずか100メートルの地点に、温度が高く動いている影を発見。
その動きからクマと思われる。
ディレクター:
大きいですね。

八伸建設HS・DRONE ドローンオペレーター:
これかなりでっけえな。
ディレクター:
怖いな。

さらに、民家の近くにもクマらしき影が…
人の生活圏に潜む、クマの脅威。

情報をすぐに市や住人に伝えた。
一夜明け、その現場へ向かうと、市の職員や警察、地元の猟友会が駆けつけていた、その場所には…

ディレクター:
よく見ると、かじられた後のような柿がいっぱいありますね。ここしっかり爪の痕がこういうふうに連なってますね。

食い荒らされていた民家の庭に立つ柿の木。
さらに、猟友会らとともに見回ると…
岩手・奥州市胆沢猟友会 門脇哲雄さん(72):
古くはねーな。古くはない。うん。でも今のところは1頭の足跡だな。

それは、クマのものとみられる足跡。
まだ新しく、大きさは15cmほど。

岩手・奥州市胆沢猟友会 門脇哲雄さん(72):
小さい。だいたい18cmから22cmだから成獣は。小さいってことは、親離れ直後だとすると1歳半くらいか。親が離れた可能性あるな。
なぜ、この時期になっても冬眠しないクマが現れているのか?
岩手大学農学部・山内貴義准教授:
気温とか雪の量っていうよりは、餌資源の量によって冬眠が早くなったり遅くなったりするっていうふうにいわれていて、街中に出てる個体っていうのは、おそらくそういった街にかなり依存している個体で、冬眠が遅れているということになります。
本来、クマは秋に餌を食べて脂肪を蓄え、餌が取れない冬に冬眠する。
実際、自然に近い形でクマを飼育する動物園では…

岩手・盛岡市動物公園ZOOMO 丸山正樹飼育員(6日):
3月の中旬ぐらいまでは、ここの部屋の中で冬眠をさせることになります。

毎年9月から10月にかけて餌の量を倍にして、体重を約65kgから約90kgにまで増量。
そこから絶食状態にすることで、冬、暗い部屋に入れると冬眠に入る。
しかし今、人里に出ているクマのように、真冬も人の食べ物にありつけられれば、冬眠の時期がどんどん遅くなるという。

山内准教授が11月、岩手・盛岡市で目撃したクマ。
リンゴ農家の倉庫に居座り、我が物顔で出荷前のリンゴを食べていた!
人慣れしているのか、ライトを照らしてもまったく動じず食べ続けた。
捕獲のため、吹き矢で麻酔を打ち込むと、数分後には…
男性:
あっ、倒れた… よろっとしてる。

4人がかりで運び出した、そのクマは…
男性:
でか、やばいっすよ、これ。

人里でよほど食べてきたのか、体長は約1.5メートル、体重は120kgにものぼった。
実はアメリカでは、とんでもない場所に居座るクマが…
そこは住宅の床下!

カリフォルニア州では、人の食べ物に慣れたクマが山へ戻らず、床下で冬眠するケースが増えているという。
山内准教授によると、日本では“床下冬眠”までは考えにくいというが、こう注意を呼びかけた。

岩手大学農学部・山内貴義准教授:
農村地帯とか、人口が少なくなって空き家とかあって、そういう感じのところがあると、もしかしたら冬眠しちゃう可能性はあると思います。そういった例は何回もあるので、鍵をちゃんとかけるとか、場合によっては撤去するとか、そういった対策をしておいた方がいいと思います。
(「Mr.サンデー」12月7日放送より)
