宮崎県都城市に新たな菓子店「霧菓310」がオープンした。手掛けるのは、138年続く老舗菓子店「お菓子の南香」の社長だった遠武大輔さん(47) 安定した地位を捨て、パティシエとして自らの道を切り拓く情熱と、新店舗に込められた祖父への深い思いを追った。
老舗の4代目社長が独立 新たな挑戦
2025年11月中旬、都城市にオープンする菓子店「霧菓310」は、開業に向けた準備に追われていた。

オーナーの遠武大輔さん(47)は、都城市で138年続く老舗菓子店「お菓子の南香」の元社長だ。遠武さんは、4代にわたり続いてきた同店を今年3月に退職。独立に向けた準備を進めてきた。

遠武さんは、安定した道を捨てる決断について「安定した道を手放すことに関して深く考えたが、社長として『お菓子の南香』というバックボーンがあった。自分の力を試したい、やりたいという思いに嘘はつきたくない」と語る。
妻も驚いた決断

遠武さんは、口に入れた瞬間、雪のように溶けるスポンジ「コナユキ」など、オリジナルの素材を生み出し独創的なケーキを提供するパティシエだ。

遠武さん、実は1年前に結婚したばかりだった。結婚直後の独立について、妻の昌子さんは「びっくりしましたね。一番はびっくりしました。色々な人に相談したり、大輔さんと話すことが増えたりして…不安ももちろんありながら、楽しみも増えていったような感じです」と心境を明かした。
祖父への思い込めた店名「霧菓310」
遠武さんが手掛ける新たな店の名前「霧菓310」には、様々な想いが込められている。

「霧菓」には「霧島で作るお菓子」という思いが込められ、「310」には遠武さんがパティシエを目指すきっかけにもなった祖父・博さんへの特別な思いが込められているという。

遠武大輔さん:
3月10日は僕とおじいちゃんの誕生日なんです。おじいちゃんの夢が孫と一緒に仕事がしたいと常日頃言っていて、僕もそれに向かって頑張っていたんですが、修行中に亡くなってしまって、その夢が消えてしまったんですよ。このお店をすることによって1回消えた夢が再現できて、一緒に働けるんじゃないかという思いを込めて310という名前を付けました。
20年以上続く地域貢献
オープンを間近に控えた11月25日、プレオープンイベントとして放課後等デイサービスに通う子どもたちを招き、クリスマスケーキ作りが行われた。

この取り組みは、遠武さんが以前の店舗にいた時から、20年以上続けてきた活動だという。

遠武大輔さん:
プレオープンは色々な形があると思いますが、僕の中のプレオープンは、やっぱり地域の子ども達の笑顔です。原点に戻れるっていう意味では、本当に子ども達から学ぶことがすごく多いです。

-これをきっかけにオープンに向けて良い弾みになりそう?
パワーをすごくいただいているので、あとはそれを発揮するだけです。
2年で 「南香超え」目指す
自分の腕を試すため、安定を捨て挑戦の道へと進む遠武さん。今後の目標は…
遠武大輔さん:
親には言っているんですが、2年で南香の売り上げを超えるというのが目標であり、親孝行だと思っています。

2年で目標達成は可能かと問われると、「いけるんじゃなくていくんですよ。やれるかじゃなくてやるんです」と、力強い決意の言葉が返ってきた。
(テレビ宮崎)