震災からまもなく2年となる被災地のいま。高岡市伏木地区では、被災した建物の公費解体が進み、空き地が目立つようになった住宅地に変わりつつある。復旧工事が進む中で、地域住民が考える「本当の復興」とは何か。被災地から希望のあかりを灯す取り組みを追った。

液状化の爪痕残る伏木地区

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地震から1年11か月が経過した高岡市伏木地区。被災した建物の公費解体が進み、住宅地には空き地が目立つようになった。中には、売りに出されている更地もある。来年度の復旧完了を目指し、道路や水道管などの工事が至る所で続いている。

地震発生当時、液状化現象で道路に水があふれ、大きな被害に見舞われた中道商店街。その一角にある化粧品店の店主、高畑直樹さん(72)は当時を振り返る。

「道に勾配がついているので川みたいにどんどん流れていた。うちは幸い液状化の被害はそんなには無かった。多少、家がひずんだ」

商店街の役員を務める高畑さんは、地震の後、高岡市が進める復旧・復興に地区の代表者の一人として関わってきた。先月、ようやく決まった液状化対策の試験施工を行う敷地。市が選定した伏木地区4カ所の候補地のうち、唯一、付近住民の同意が得られたのは、商店街が管理する駐車場だった。

80億円を超える工事費が見積もられるこの液状化対策は、まさに復興のスタートとなる重要な取り組みだ。高畑さんはその第一段階のとりまとめに奔走した。

「もろ手をあげて賛成というわけにはいかなかった。直したばかりの住宅のそばでやるのは困るという話も出てきた。で、何とか同意を取り付けて、試験施工の経過をみて、それでよかったら、全部やりましょうということなので、1日でも早く地盤を強固にして、安心して開発できるような状態になってほしい」

復旧は進むも人口流出に歯止めかからず

高岡市が立ち上げた復興会議では、被災地の新たな復興計画づくりが進んでいる。しかし、復旧工事が進む中で、高畑さんは被災地に暮らす住民として、「本当の復興」について考えを巡らせている。

「道路の側溝、融雪装置の工事が今月中には終わると聞いている。復旧は順調に進んでいると思う。ただ、公費解体が進んで空き地が増えてインフラ整備をやって元の状態になったらそれで復興なのか、ということではない」

地震で大きな被害が出た伏木地区では、家を解体して地区を離れた住民が多く存在する。地震前後の人口減少率は、高岡市全体がマイナス1.56%なのに対し、伏木地区はマイナス12.92%に達している。同じく液状化の被害が大きかった吉久地区においては、さらに深刻なマイナス28.99%という数字を記録。地震が人口減少に拍車をかけている現実がある。

高畑さんの復興に対する指摘は、地震によって人口減少が加速度的に進んだとは言え、元の衰退局面の状況に戻すだけでは多額の費用をかけて行う復興の意味がないというものだ。

未来を見据えた「本当の復興」へ

「復興は元に戻ることではなくて10年後、20年後を見据えた、こういう街になるのなら、ここに住んでみようとか、ここで商売やってみようというふうな夢を持てるような、魅力のある街になっていけばいい」

高畑さんは今、3つの自治会に声を掛け、ある催しを企画している。それは、イルミネーションで復興に向けた住民の思いを改めて一つにするための「あかり」を灯す催しだ。

「12月20日土曜に点灯式をやりたい。何か温かいものを用意して皆さんに提供できないか」

点灯式では、集まった住民に温かい食べ物を振舞うなど一緒に盛り上げてほしいと各自治会に呼び掛けた。湊町自治会の氷見長正会長は、この取り組みについて前向きな反応を示している。

「外部に出て行った人がいる、やっぱり戻ってほしい、環境づくりは大事。その一環としてイルミネーションが起爆剤、いい考えだと思う」

地震からまもなく2年。復旧から復興へと向かう被災地を照らすあかりが、今、灯されようとしている。その光は、失われた地域のつながりを取り戻し、新しい未来を築くための希望となるかもしれない。

(富山テレビ放送)

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