いま、茨城県が年度内の導入を目指しているのが…、
在留カードやビザを持たずに不法就労する外国人、そうした人たちを雇用する事業者について、市民に情報提供を求める「通報報奨金制度」です。
逮捕につながれば、情報提供者に対し1万円程度の報奨金を払うことを検討しています。
しかし、3月6日に開かれた県議会では…。

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玉造順一茨城県議:
報奨金支給まで県が制度化するのは排外主義を助長しかねない

これに対し、大井川知事は…。

大井川和彦知事:
通報の対象はあくまでも不法就労者を雇用している企業
に関するものであり、外国人の差別を助長するような、そういう通報制度にはならない。

茨城県が「通報報奨金制度」導入を進める背景にあるのが、不法就労者数全国ワースト1という現状。
出入国在留管理庁によると、2024年、全国で摘発された不法就労者は1万4000人あまり。そのうち茨城県は3452人と3年連続で全国最多となっています。
不法就労が増えると、外国人の労働環境の悪化や、適正な税収が減るなど、様々な問題が起きる可能性があります。

『サン!シャイン』が、正規のルートで外国人労働者を雇っている農家を取材すると、理想と現実の狭間で悩む現状が見えてきました。

資金・労働力不足に悩む農家も

外国人労働者を雇用している 山口farm 山口正博さん:
人材の不足があるんで、そこを担うのに日本人もそうですけど、海外の方っていうので、今、受け入れてますね。

取材したのは、茨城・小美玉市のレンコン農家。現在、正規の手続きを経てベトナムとインドネシアから来日した6人の外国人労働者を雇用しています。

正規の在留資格で働くインドネシア人 アンゲールさん:
私の国は仕事の給与が安いから、日本は給料が高いから、それで来ました。
日本で(1カ月)働くことはインドネシアで4カ月暮らせる。(私は)大切な日本のルールを守ります。

代表の山口正博さんに、県が導入を進めている「通報報奨金制度」について聞くと。

山口farm 山口正博さん:
率直にいいことなんじゃないかと思いました。
正規で雇っている側にしたら「理想形の形」なのかな。悪いことは悪い、法律にのっとって雇い入れるというのは当たり前のことだと思っています。

制度に賛成する一方で、こんな心配も。

山口farm 山口正博さん:
「かもしれない」とか「思う」とかで通報するのは、ちょっと間違ってるかなとは思いますね。

また、正規ルートでの雇用が難しい農家もあるといいます。

山口farm 山口正博さん:
衣食住とかトイレとシャワーとかを設けた上での雇い入れなので、そこまでの資金が出せないという方もおられますし。
年間ずっと仕事があるわけでもないし、忙しい時は忙しくて(繁忙期が)ぎゅっと迫ってくる中で、人材の確保っていう部分でどうしたらいいかわからないから、(不法就労外国人に)ちょっと手を出しちゃうっていう方もいると思うんですよね。

「通報報奨金制度」が不法就労外国人対策として期待される一方で、労働力不足に悩む、一部の農家の現実。
折り合いをつけていく方法はあるのでしょうか。

「通報報奨金制度」ポイントは

茨城県は2025年、報奨金なしで「通報報奨金制度」を実施しました。29件の情報提供があり、そのうち1件は書類送検に。
これを受けて、通報者からの情報を増やし精度を上げるため、県は2026年4月から報奨金(協力金)1万円を検討しているということです。

入管法や外国人の労務管理に詳しい山脇康嗣弁護士に「通報報奨金制度」について解説していただきました。

ポイント① 実効性(目標達成の力)が低い
外から見ても不法就労か判断ができず、現状、県職員には捜査権もない

山脇康嗣弁護士:
前提として、不法就労を減らすという目的自体は正当なんだと思います。

日本は無条件に外国人労働者の方を受け入れるという制度は取ってなくて、いろんな問題が起きないように要件とかルールを設定してやっているわけですから。不法就労が横行しますと、そういうルールが成し崩しになって在留資格制度が維持できなくなりますし、安い賃金で不法就労の方が働くと、正規に滞在する外国人労働者の方の条件とか、日本人の労働条件も引きずられて低下する、上がらないという悪影響もありますから。
ただし、それを達成するための手段としてどうなのかなと。不法就労かどうかというのは、外見から見ても判断できないし、法律的にも不法就労にあたるかどうかは難しいんです。市民の立場から見ての判断は難しいし、通報を受けた県側も強制的な調査権もないですから、見抜くのは難しいんです。本当に合理的な根拠がある情報が寄せられるのか、それで本当に不法就労を少なくすることにつながるのかどうかについて実効性に疑問があると思います。

――報奨金で実際に情報の精度は上がると思いますか?
そもそも外形的に判断が難しいわけですから(通報)件数が増えたとしても合理的根拠が上げられるか、精度を高められるかというとかなり疑問だと思います。

正規の在留資格で働くインドネシア人
正規の在留資格で働くインドネシア人

ポイント② 偏見・差別を助長する可能性
内部告発に頼る制度で“相互不信”にもつながり、報奨金目当ての虚偽の通報や偏見助長の懸念も

山脇康嗣弁護士:
不法就労かどうかというのは外見で判断、法律的判断が難しい。そうすると、合理的根拠に乏しい情報が多く寄せられる。相互不信・相互監視ということで偏見や差別を助長する恐れもないとは言えないと思います。

もしこの制度が本当に機能するとすれば、本当に確たる情報を持っている内部告発者の方による通報だと思いますが、そもそも内部告発する人って別に1万円もらえるから内部告発するわけではないので。そういう意味においても1万円を出すという手段の実効性はどうなのかなって思います。

――茨城県は実名での通報のみ受け付けるということですが、そこが一つストッパーにはなるのでしょうか?
匿名通報でなく責任を持ってもらうという実名通報をするということで、なるべく合理的根拠のない通報を減らそうという姿勢は見られると思います。
(「サン!シャイン」3月13日放送より)