外壁が剥がれ、つるされたブルーシートも穴だらけ―――。「空き家」が全国で増加の一途をたどり、各地で深刻な問題になっている。一方で、持ち主に話を聞くと「壊したくても壊せない理由」を明かす。空き家の解体や活用を取材すると、地域ごとにバラつきが浮かび上がった。

外壁剥がれ…増える空き家

18日に大分市で発生した大規模火災は、延焼した170棟あまりの住宅ののうち、空き家が4割とみられている。火災拡大のリスクなどさまざまな危険性が指摘されており、老朽化した空き家は全国で増加傾向にある。

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こうした状況は首都圏も例外ではない。取材班は、住宅の3割近くが空き家となっている千葉県いすみ市を取材した。

記者:
いすみ市の中央通りである大原中央商店街を歩いています。シャッターが閉まっているお店が非常に多いなという印象です。

精肉店の男性店長:
(空き家多くなってる?)感じますよ、洋品店がまずね。あと、いいスーパーができてもダメになる。

近くに住む女性:
子供が高校通うって言ったってさ(電車もないから)通いようがないんだよね。都会に行っちゃって帰ってこないよ。

商店街を歩くと、壁がはがれた建物が。屋内に吊り下げられたブルーシートも穴だらけ。ガラスの扉の中には、植物が生い茂っていた。

進まぬ処分や活用

なぜこのような「空き家」状態になってしまったのか。

この建物を所有している男性は「15年くらい前かな、(貸していた店舗が)撤退しちゃったんですよね。(その後は)ほとんど空き家」と話した。

長い間、「空き店舗」状態だったという建物。使われていない住宅も、増加傾向だ。

2023年の調査によると、全国で900万あまりの空き家が確認され過去最多を更新。30年前から倍増している。

空き家が増加する要因について、千葉県の担当者は「相続された後の活用や処分が進まない、高齢者が介護施設に転居する、住宅の老朽化による利用困難など様々な理由があると思われる」と指摘する。

空き家解消へユニークな策も

人口減少に歯止めをかけるため、いすみ市では「思い切った対策」を設けている。

東京23区から移住してきた人などに現金を支給する移住支援金制度だ。単身者には60万円、子供のいる世帯は最大200万円など支給する。

さらに、移住後の賃貸物件として、「空き家」を紹介する仕組みもある。この制度を利用した空き家の賃貸契約は14年で166件だが、それでも空き家の解消には至っていない。

こうした状況に、自治体だけでなく民間からも空き家解消のアイデアが浮上。それが、「空き家オークション」だ。

空き家の売買をオークション形式で行う取り組みで、売却と購入の希望額や、使用方法で両者が納得すれば契約が成立する。

このプロジェクトをボランティアで立ち上げたのは、この街に住む建築士だ。

荘司和樹さん:
空き家対策に失敗したら、もうゴーストタウン化していくよねって話しになって。地域の有志と一緒に、空き家オークションという取り組みを完全ボランティアで(やることになった)。

建築士のノウハウで、改修やリフォームも空き家オークション事務局がサポート。2023年から始めたこの取り組みで、これまで3件の契約が成立している。