山元町の災害危険区域内に、震災後にできたキャンプ場があります。
毎週末賑わうキャンプ場はオーナーの思いを込めた名前が付いています。

宮城県山元町にある、笠野地区。大半は、災害危険区域に指定されています。
震災前は800人以上が暮らしていましたが、現在は9分の1以下にまで人口が減りました。

そんな笠野地区の一角にある、「casano-va」、キャンプ場です。
地域の名「笠野」から名付けられました。

オーナーの齋藤順子さんは、この笠野地区で生まれ育ちました。
casano-va代表 齋藤順子さん
「最初どうしていいか、どうしようかなって思ってたんですけど、でも地名(笠野)は残したいって思ってたんですね。隣にあった新浜地区は(震災後に)なくなった。ここで生まれてるんです、私の家で。それなので絶対になくしたくないという思いもあって、とにかく”笠野”というのをどこかにどうにかして残したいなっていう思いはありました」

齋藤さんが思いを込めた「casano-va」は、広さ約2000平方m。
テントの数でいうと20張りほどです。
キャンプ場としてはこじんまりとしていますが、車両の乗り入れも可能。
知る人ぞ知るキャンプ場として口コミで人気を呼び、週末を中心に県の内外から利用客が訪れます。

仙台市からの客
「ここペット可なので、それも良いところですよね。あと通年やってるのも。けっこう宮城県、冬場やってないキャンプ場も多いんですよね」

岩手・盛岡市からの客
―ここは何でご存知に?
「たまたまネットで…キャンプが好きで、ソロキャンプが。オートキャンプが好きで、車中泊しますんで、宮城でお安いところというか、オートキャンプ場は高いので、来てしまいました」

料金は中学生以上の大人が1人1000円で、小学生は半額の500円。
薪はたき火台1台あたり、500円で、一泊の間、使い放題というのも人気の理由です。

casano-va代表 齋藤順子さん
「ここ割ったんですよ、私。こうやって」
―薪割りもする?
「割る、割るよ」

斎藤さんは震災前、ここでイチゴ農家を営んでいましたが、津波で自宅前などにあったイチゴハウス23棟はすべて流失しました。
そんな時、息子さんが幼かった頃の思い出が、頭をよぎったそうです。

casano-va代表 齋藤順子さん
「本当に息子が小さい頃、サッカーをやってた時に、夏にキャンプとかをやって楽しかったんですよ。広い場所…みんなが集えてキャンプできる場所っていいなと思って、自分が小さい頃には(キャンプを)したことがないので、グラウンドとか作れたらいいなと思ってた時に…それは遠い昔に思ってた話だったんですけど、津波が来て、それを作る現実が現れて」

震災後に荒れ果てた土地を平らにするのも、トイレなどの設備も、親族や近所の人、知人達の協力があって、「casano-va」は整っていったそうです。

casano-va代表 齋藤順子さん
「もう本当に、ホントにありがたい…もうホントになんていったらいいんだろう…感謝しかないですよ本当に、幸せです、もうそれだけ。だから1日でも長く元気でいて、やらなきゃいけないなとは思います」

夕方を迎えました。
ほとんどのキャンパーが、楽しみにしているのが、たき火です。

夕方になって到着した、福島県相馬市からの2人組。
たき火でおでんを温め、サンマを炙ります。

「せーの!で…(一尾目返す)」
「いただきまーす…あーっ、これ最高!」
「あっ、うまい…うまい!」

キャンプサイトがまだ寝静まっている午前5時。
カサノバの一角に灯りがともっていました。

casano-va代表 齋藤順子さん
「パンは好きだったのね、パンを焼くということが」

齋藤さんのもう一つの顔は、パン屋さん。
利用客の多い週末を中心に、営業します。

パンは、値札のあるもの以外はすべて250円。
甘いものからお惣菜系まで、いろいろなパンが並びます。


「おねがいしまーす」
casano-va代表 齋藤順子さん
「はーい、えーと…1000円です。はい、ありがとうございます」


「おかげさまで楽しいキャンプでした」
casano-va代表 齋藤順子さん
「じゃ、気を付けて!遠いんでね、ありがとうございまーす」

カサノバは常連もいれば、初めての人も大歓迎。
齋藤さんはキャンプ場のオープン以来、一期一会を重ねてきました。

casano-va代表 齋藤順子さん
「とにかく長く続けていって、人が集える場所を確保してないといけないので、今まだ何も建てられないここ(災害危険区域)、場所なんですけども、長くやってたらまた何か変わるかもしれないし。やっぱりいる人が守らないと守っていけないので、(笠野を)守っていきたいなって思っています」

仙台放送
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