高市総理大臣の台湾有事を巡る答弁で中国が強く反発し、日中関係は緊張の度合いを増しています。県内では日中交流の大会が中止になるなど影響が出始めています。各地を取材しました。
       
「県日本中国友好協会」の玉村和夫会長によりますと、11月29日と30日にあわら市で予定されていた中部6県の日中友好協会の代表らが集う「日中交流大会」の中止が20日決まりました。中国大使館からは、大使に次ぐ地位の公使3人が出席する予定でした。
 
玉村会長は「残念だ」としながらも、「(高市首相が)ちょっとストレートに言ったなと思っている。ただ、私たちはあまり心配していない。中国側もある程度予測していただろうし」と冷静に受け止めています。
  
県日中友好協会では、半世紀にわたり農業や教育、文化など多方面で、福井と中国との間での民間交流を進めてきました。
 
これまでも、天安門事件や尖閣諸島問題など、幾度となく関係が冷え込んだ日本と中国。玉村会長はそのたびに双方が歩み寄ってきた過去を振り返り、今回もいずれ打開に向かうとみています。
 
玉村会長は「これから日本と中国が仲良くすることが平和の礎、自分たちの幸せと平和につながってくる。世界の平和にもつながっていくことを特に若い人たちに伝えながらバトンタッチしていきたい」としています。
 
一方、県内では7つの市や町が、中国の都市と友好・姉妹都市の提携を結んでいますが、今後の交流活動への影響が懸念されます。
 
田島嘉晃アナウンサー:
「あわら市です。あわら湯のまち駅の近くに2人の像があります。一人は、この地で生まれ育った医師・藤野厳九郎。もう一人は、中国の文豪・魯迅。二人の交流をきっかけに、あわら市は40年以上前に中国・紹興市と日中友好都市の関係を結びました」
 
県内で最も長く中国側と交流を続けているあわら市。12月、あわら市の中高生が現地を訪れる計画がありますが、今回の問題を受けて市は「安全を最優先に状況を注視したい」と慎重な姿勢を見せています。
 
中国側と友好提携する県内のそのほかの自治体は、そもそも日中の交流イベントが控えていないため「現時点で影響は特にない」としています。
 
高まる日中間の緊張。問題の発端は11月7日の国会審議でした。台湾有事に関する野党の質問に対し、高市総理は「日本にとって存立危機事態になり得る」と答弁しました。
  
これまで政府が曖昧にしてきた台湾有事の具体的なケースに初めて踏み込んだことに、中国は強く反発しているとみられます。
 
街の人は今回の高市総理の発言をどう見ているのでしょうか。

街の声:

「できる限り穏便にいってほしいが、言うことは言うという感じでしっかりと芯をもって対応してほしい(20代男性)」

「(高市首相は)今までの(政府の)立場を踏まえて発言していると思う。(日中関係が)こじれてこの先どうするのか、しつこく聞いた岡田議員が悪いと思う(40代男性)」

「(中国総領事の)首を落とすという発言は良くないと思う(30代女性)」

「(首相の)気持ちはわかるが、言葉に出すことによって、当然中国との関係が必要以上に悪化する(60代男性)」

「(私は)平和主義なので仲良くできないかなと思っている。(日中間に)長い因縁のようなものはあるが、仲良く出来たらうれしい。難しい問題だとは思うが(首相の発言は)正しいと思っている(20代男性)」
 
一方、あわら温泉の旅館「グランディア芳泉」では、この時期は越前がにを求めるインバウンド客でにぎわいます。
 
あわら温泉では、台湾や香港からの客が多いため、今のところ影響は限定的と見られています。
 
グランディア芳泉・山口高澄常務取締役:
「そもそもやっぱり中国の方が少ないので、影響はまだないというのが現状」と話します。
 
ただ山口常務は、今後日中情勢がさらに悪化すれば、その影響があわら温泉にも及ぶ可能性があると懸念します。
 
中国人の訪日旅行が減って国内全体のインバウンド需要が落ち込むと、全国的に宿泊料金の値崩れが起きて経営にダメージとなるというのです。

山口常務は「まだ見えないことが多いので、今からしっかりと対応することがあれば行いたい」としています。
 
先が見えない日中関係の緊迫化。事態が長引けば地方の交流事業や経済への影響が広がりそうです。
 
尚、福井大学では、現在55人の中国人留学生が学んでいて、留学生全体の28.8%を占めていますが、現時点で影響はないということです。
          

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