勉強にも躾にも厳しいスパルタ教師。ハーンが育ったイギリスでは昔から、悪いことをした子供には尻を叩く罰を与える。鞭で尻叩く怖い教師もいたようだ。
ハーンも子供たちにイギリス式の尻叩きをよくおこなったが、やり過ぎないよう力加減には細心の注意を払う。
「子供を叱った後くらい気持ちの悪いことはない。子供を叱るたび私の寿命は縮まる」
と、セツにはよくこぼしていた。体罰はむしろ、子供たちの体よりもハーンの心に強い痛みを与えていたようだった。
悪戯好きだった次男の巌(いわお)は、しょっちゅう折檻を受けていたのだが、気性が強く大柄な彼には、ハーンの手加減した尻叩きでは効果が薄い。また、長男・一雄や三男・清も、成長するに従ってあまり怖がらなくなる。
子供たちが恐怖した“ラスボス”
子供たちがハーンの尻叩きよりも警戒していたのは、キレた時のセツだった。
ふだんのセツはハーンほどには躾に熱心ではなく、子供たちの悪戯を見て見ぬふりでスルーすることが多かった。住環境の汚れには神経質な潔癖症だが、教育については鷹揚で細かいことは気にしてない。
