2024年11月、本島北部を襲った記録的な大雨で河川の氾濫や土砂崩れが発生し、各地で大きな被害が出ました。
あれから1年、甚大な浸水被害を受けた国頭村比地地区では、仮設住宅などで生活していた住民もみな戻ってきましたが、元の生活を取り戻すにはまだ時間が必要なようです。
2024年11月の9日から10日にかけて、本島北部には線状降水帯が発生し、東村では観測史上最も多い639ミリを観測するなど、国頭村や大宜味村でも記録的な大雨となりました。
2日間で降った雨の量は11月の平均雨量の5倍で、この大雨により土砂崩れによる道路の寸断などが各地で発生し、国頭村の比地地区では比地川の氾濫などより集落の半数にあたる38棟が浸水しました。
比地地区住民の神山秀光さん:
こっちからも溢れて来ますでしょ、川から。渦巻いてる、渦巻いてるわけ
神山秀光さんの自宅にある倉庫には、水と一緒に泥が入り込み片付けに追われました。
神山秀光さん:
もう最初は夜中も起きたりしてどうしたほうが…どのようにやれば良いのかなとかね、段取りはうまくいくのか、どうしようかとかもう毎日…
国頭村によりますと7月で被害にあった住宅すべての修繕作業が終わり、仮設住宅などで生活していた住民も全員がもとの家に戻っています。
神山さんの自宅も元通りになりましたが、所有している畑にはまだ手が回っていない場所もあります。
神山秀光さん:
やっぱり1年経ってもあちこち残っていますからね。徐々に片付けはやっているんだけど
大雨の影響がいまだ色濃く残っているのは農業や畜産業です。
親子3代で観葉植物のドラセナを育てる大城政志さん。出荷を間近に控えていたあの日、比地川の氾濫によって畑に大量の土砂が入り込み収穫が一切できなくなり日常が一変しました。
ドラセナ農家 大城政志さん:
現状では全滅です。出荷できるものがないから片づけをしてそこからの目途なので…(2024年12月)
あれから1年。現在の様子を見せてもらいました。
大城政志さん:
(ここは)あのときのままなんです。土砂が残ったまま。自分たちで取ろうとしたけれど、土が重すぎて無理でした。役場の方にお願いして撤去する予定なんですけれど
浸水の影響で土壌に細菌が繁殖したため、植物の病気が広がり、作り直しを余儀なくされた畑もあります。
大城政志さん:
倒れているのがちょこちょこあるじゃないですか。これがもう土に病気がはいっているんですよ。これはもう治しようがない。調べたら治しきれない病気なので、もの自体もここも作り直し
どうにか再生の道筋が見えてきた2棟のハウスを中心に作業を行っていますが、金銭面の課題が重くのしかかっています。
大城政志さん:
お金がない、出荷してそれで生活していたものがなくなるから、生活に回せる分もなくなるんですよ。寒くなって気温も落ちてきたら、病気とかも増えてくるのでまたお金はかかるし、だけど(全部が)出荷できる状態ではないから
以前の状態に戻るまで4、5年はかかる見込みで先行きの見えない不安な状態が続いています。
国頭村比地 大城健治区長:
本当にもうこの比地区はだめになってしまったのかなと、そういうふうに本当に大きなショックを受けて。この先どうしようかと考える時間はその直後はなかったですね
比地区の大城健治区長。区民の住宅や畑の再生、心のケアの問題まで区民や専門家、行政と話し合いを重ねながらこの1年を過ごしてきました。
比地地区の被害がここまで大きくなった要因の一つとして比地川の浚渫工事が行われていなかったことが挙げられます。
大城健治区長:
災害前に訴えかけてきたこと、浚渫工事を早くやってほしいということが災害後に実現して、そのあたりはやはりほっとしています
比地川の浚渫工事は、集落から上流800メートルの場所まで終わっていて、北部土木事務所は2026年度いっぱいの完了を目指しています。
さらに5月、比地川には水位が1メートルまで迫った際、区民にいち早く知らせるための回転灯が新たに設置されました。
大城健治区長:
安心感はあるし、これがあったらむやみやたらに家から出て川を見に行こうとすることはなくなると思います
川の様子もリアルタイムで配信されていて、県や村がいち早く状況を把握し対応できるよう改善されました。
大城健治区長:
本当にね、今振り返って1年前本当にそういうことがあったのかと、いまこの集落を回っていても思うし、みんな忘れないで今後の教訓に活かして防災・減災に努めていけたら
北部豪雨から1年。比地区はもとの穏やかな姿に戻りつつあります。しかしすべての人がもとの生活を取り戻すためにはまだ時間が必要です。