北部豪雨では、沖縄県の初動対応の遅れが課題として突き付けられました。
その反省をもとに、大雨などの恐れがある段階から国や県、市町村がより密接に連携して事態に備える新たな防災体制を取材しました。
喜屋武記者のリポートです。
2024年11月の北部豪雨では、名護市や国頭村など5つの市と村で130棟が浸水や破損の被害を受けました。
罹災証明書が発行された106世帯のうち、半数近くが準半壊以上と判定されましたが、県独自の見舞金や義援金などを活用して、住宅の応急修理を行っています。
一方で、北部豪雨では県の対応が遅れ、大雨が収まったあとに災害対策本部が設置され国に協議を申し入れたため、災害救助法の適用が受けられなくなりました。
県の災害対応の課題として挙げられたのは「被害情報の収集と共有」そして「県庁全体の連携不足」です。
沖縄県消防防災対策課防災班 當山慎班長:
本部の設置が迅速に行われなかったところはあると思いますし、気象情報、正確な情報を迅速に収集・共有するということもなかなかうまくいかなかったと考えています
こうした反省を踏まえ、県は災害の警戒や対策を行う本部の設置基準を見直しました。
以前は大雨警報などを基準に設置を判断していましたが、北部豪雨を契機に線状降水帯の発生や土砂災害警戒情報などより多くの情報をもとに体制を取る方針へと改めました。
また、災害対応の遅れや漏れを防ぐために5月には新たな仕組みも整えられました。
沖縄県消防防災対策課防災班 當山慎班長:
災害発生時にいつ・どの機関が・何をすべきかということを時系列でまとめた「おきなわ県域水防災タイムライン」というものを策定しております
7月、台風8号の影響で南北大東村を大雨が襲った際には、このタイムラインが活かされました。
沖縄県消防防災対策課防災班 當山慎班長:
大東島地方で線状降水帯の発生の可能性があるという情報が沖縄気象台から提供されたので、その際、地元自治体に直ちに通報するとともに災害警戒本部を設置して対応を開始しました
その結果、早い段階で情報収集と対応が進み、災害救助法の適用もスムーズに行われました。
沖縄県消防防災対策課防災班 當山慎班長:
それぞれの役割や実際の行動のタイミングをしっかり意識して動くことにより、対応の遅れ等が無かったと考えています
北部豪雨から1年。反省と教訓を活かして、県は防災体制の一層の強化を目指します。
沖縄県消防防災対策課防災班 當山慎班長:
現行のタイムラインと災害対策本部の設置基準も今はまだ試行段階にありますので、実災害への対応を随時検証してブラッシュアップしていく必要があると考えています
そして、被災地を支えようとする動きが1年経った今も続いています。
与那原町で街頭募金を呼びかけたのは、約1年にわたって北部地域の復興のため活動を続けてきた高校生ボランティアの会です。
これまでに国頭村に120万円あまりを贈り、農地でのボランティア活動も行ってきました。
今回は東村と大宜味村へ30万円ずつ届けようと募金を呼びかけました。
沖縄尚学高校2年 森川開斗さん:
1年経つとみんな復旧できているんじゃないかと思っていると思うので、自分たちが街頭募金に立つことで1年経っても終わっていないんだということを色んな人に広げていきたいです
生徒たちは12月26日、集まった善意を東村と大宜味村へ届ける予定です。
北部豪雨から1年。反省をもとに県は防災体制を強化し、高校生たちは北部地域を想って行動を続けています。