福岡県川崎町の自宅で7年前、当時生後11ヵ月の長女に暴行を加え死亡させた罪に問われた母親の裁判です。
11日の初公判で母親は起訴内容を否認し無罪を主張しました。
11日の福岡地裁の法廷にスーツ姿で現れた松本亜里沙被告(29)。
裁判長から起訴内容について問われると「私は故意に笑乃(えの)ちゃんに暴行をふるっていません」とはっきりとした声で無罪を主張しました。
事件が起きたのは2018年7月。
起訴状によりますと松本被告は当時住んでいた川崎町の自宅で、当時生後11ヵ月の長女、笑乃ちゃんに対し、頭に強い衝撃を与える暴行を加えて死亡させたとされています。
当時、自宅で松本被告と2人で過ごしていて異変が起きた笑乃ちゃんは救急搬送されましたが、3日後に亡くなりました。
頭部の骨が折れていて、死因は急性硬膜下血種と脳が腫れあがるびまん性脳腫脹でした。
医師が不審に思い警察に通報しましたが、松本被告は一貫して事故だと説明していたということです。
一方、警察は50人近くの医師から意見を聞き、松本被告が暴行したことによる傷害致死の疑いが強まったとして逮捕に踏みきりました。
事件当時、松本被告と同居していた元夫は取材に対し「冤罪やろ。『ありえんやろ亜里沙は』ってみんな言います」と話していました。
事件の3カ月ほど前に笑乃ちゃんが頭にけがをして入院したことについては…。
◆松本被告の元夫
「(医師が)『大丈夫帰って』と言ったんですけど、妻は『絶対おかしい』『CTとってくれ』と言って頭にヒビが入っているという。虐待するような親がですよ、自分から『容態がおかしい』って病院に行って帰っていいよと言われたら普通なら帰ります。虐待しているなら」
笑乃ちゃんが亡くなってから7年がたって開かれた初公判。
法廷では事件当時、松本被告が119番通報した時のやり取りが公開されました。
《2018年7月28日 午前11時50分ごろ》
◆松本被告
「救急車をお願いしたいんですが」
◆消防
「どうされましたか?」
◆松本被告
「バンと音が聞こえて(笑乃ちゃんが)倒れていて、体が固まってて目が合わない」
◆消防
「こういう症状ははじめてですか?」
◆松本被告
「初めてです」
起訴内容を否認した松本被告に対し、検察は冒頭陳述で「笑乃ちゃんの成長が遅いことなど、育児にストレスを感じていた」「当時の笑乃ちゃんの身体能力を考えると、転倒は考えられない」と指摘しました。
一方、弁護側は「被告の持病の発作が起きたことによる事故の可能性があり、故意の暴行は一切認められない」と無罪を主張しました。
11月19日には被告人質問が行われ、判決は来年3月に言い渡されます。
「医学論争」の末に無罪判決が相次ぐ
今回の裁判では笑乃ちゃんの死に至った原因が暴行なのか事故なのかが争われることになります。
全国ではここ数年、乳幼児が関連する裁判で無罪判決が相次いでいます。
乳幼児が死亡したりけがをしたりして傷害致死や暴行などの罪に問われた保護者に対し、裁判所は「病気」「落下事故」「突然死」「特定できない」などと判断し、無罪判決が出ています。
背景の1つとして、被告弁護側が医師と協力して法廷で徹底して「医学論争」を繰り広げることが挙げられます。
医学の専門的な見解が示されると、それを受けて裁判官が別の原因を指摘したり特定したりができないとする判決が相次いでいるとみられます。
今回の裁判も審理の推移を見守る必要がありそうです。