新米の季節を迎えた今も、高止まりしているコメの値段。

農水省によると、10月27日から11月2日にかけて全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は、5kgあたり4235円。2週ぶりに値上がりし、5月中旬に記録した過去最高の4285円に迫る水準です。

そんな中、就任早々、鈴木憲和農水相が打ち出したのは、備蓄米放出やコメの増産方針などの見直し。そのうえで鈴木大臣は「おこめ券の配布」などを検討することを明らかにしました。
おこめ券 歓迎の一方で懸念も
物価高対策として、地方自治体を支援する「重点支援地方交付金」があります。自治体が自由に使える地方交付金の中には、推奨事業として、商品券配布、省エネ家電買い換え支援、給食費支援などがありますが、そのうちの一つとして政府が活用を推奨していこうというのが「おこめ券」の配布です。

おこめ券は、コメの卸売業者の団体「全米販」などが発行。街のお米屋さんや大手スーパーなどで使えるといいます。
「サン!シャイン」が向かったのは、横浜のコメ販売店。

農家産直米すえひろ 荒金一仁 代表:
こちらの券、1枚で440円のお米と交換することができます。仮にこちらが10枚ご家庭に配られるということは、4400円分の金券として使えるということですね。
おこめ券を各家庭に配布をしていただけるというのは、喜ばしいことだと私たちは思っております。
一方で、こんな疑問も…。

農家産直米すえひろ 荒金一仁 代表:
この券を買おうとすると、だいたい1枚に対して500円ほどする。そう考えますと、額面が440円ですから1枚60円分。その手数料分っていうのはちょっともったいないなあと思うところもあります。
購入する際に1割ほどコストがかかるため、その分、税金の無駄遣いにつながるのではないかという懸念もあるといいます。
一方、コメ農家はお米券の活用をどう受け止めているのでしょうか?
千葉県のコメ農家の多田さんは…。

コメ農家 多田正吾さん:
食べてみようかなっていう人が増えれば、それだけでも生産者としてはありがたい。
消費者はどのぐらいの(値段の)お米が欲しいのか?生産者はどのぐらいだったらこの物価高に対応できる生産ができるのか。そこを国が価格調整に触れてくれないと困る。

コメ離れに歯止めをかけるとして歓迎しつつも、消費者と生産者がともに納得できるコメの価格を政府には調整してほしいといいます。
なぜ政府は、コメの値段そのものを下げる「備蓄米の放出」や「増産」ではなく、「おこめ券」に舵を切ったのでしょうか?
その理由、メリットとデメリットを深堀りします。
なぜ「おこめ券」推奨?メリットとデメリット
――政府がおこめ券を推奨する理由は?
フジテレビ 智田裕一 解説副委員長:
おこめ券だとピンポイントでお米の高値に苦しんでいる人に恩恵を届けられるというところが一番大きいです。
地方に事業を委ねるということになれば、世帯とか枚数とかその地域の特色に応じた配り方ができる。お米の値段の地域差もあるし、世帯が地域によってちょっと違ったりするので。
きめ細かいお米高値対策ができるかもというのでおこめ券というのを今、力を入れてやっていこうというふうにしている。

米流通評論家 常本泰志氏:
物価上昇率が実質賃金を上回っている状態なので、たくさんお子さんのいる家庭においては有効じゃないかというのがあります。
大阪府では子育て支援事業っていうのが行われていて、当初「現物配るよ」ってやったんですね。「お米10kg」みたいな感じで。それに対して僕は反対をかけて「おこめ券にしましょうよ」って話をしたんですが、おこめ券を発行するのに印刷する枚数がとてつもない枚数になってしまうので、団体さんが発行部数を用意できないとかそういう面で今デジタルクーポンみたいな形で子育て支援はやっていますね。
デジタルクーポンにするっていうのは比較的費用は収まるのではないかと考えます。
谷原章介キャスター:
米価を維持するために国って税金使ってるじゃないですか。でも今度その価格を下げるためにもう1回税金を使うというのがすごく効率悪いんだと玉木さんもおっしゃっていましたけど、どう思いますか?
フジテレビ 智田裕一 解説副委員長:
本当は今まで備蓄米の放出を通じて価格を抑えようっていうところだったんですけど、今回はお金を出す時に負担をちょっと和らげてあげてそれで家計支援しようっていう話なので。その効果が一時的になる可能性はもちろんあるし、高い値段のお米を買うときにちょっと軽減してあげるわけなので、その価格の高止まりを助長してしまう可能性もあります。
すでに配っている足立区の住民の方とかに取材すると、「1回だけもらってもずっと高値だと困るよね」なんていう声も出ているんですよね。
おこめ券は原則使い道がお米なんですけれども、お米以外のものにも使えるというケースがあって、本当に米の高値だけに的を絞った対策になるかどうかという疑問の部分もある。
あと、配るための事務費とか郵送費のコストが結構かかるというのがあるので、物価高対策としてのコストに見合った効果がちゃんと発揮できるのかというところが問われるかなと思います。
どうなる?今後のコメ価格
米流通評論家 常本泰志氏:
年末年始にかけては多少安いものが出てくるのかなという予想はしております。これが春頃になるともう一段階安くなる。5kgあたり2980~3580円のものもB銘柄で出てくる可能性はあるだろうと踏んでいます。
これはなぜかというと、結局令和7年産が高すぎて売れないという状態があります。それを今度8年産ができた時のお金をまた回収しないといけませんし、借金までしてお米を集荷している業者さんというのはたくさんありますので現金化したい思惑が働いてきます。余り出すとそういった動きが出てくるので、大手スーパーさんよりはどちらかというと地域スーパーさんで安いのが出てくるかなと思っています。

――これから増産の方向に踏み切ることは間違いない?
結局これから若手従事者を増やしていく施策、中長期的な農政が必要になってきます。今、平均年齢が71歳超えてきてますので。この先、生産減の方が先に来るんですよ。どうしても放棄地が増えてきますので。
それをやれるだけの生産者をどう増やすかというのが中長期的な課題だと思っています。
(「サン!シャイン」11月11日放送より)
