函館の漁師「北海道の漁師みな殺す気か?」
「死活問題」と嘆くのは、スルメイカで生計を立てる北海道・函館市の漁師たち…。

10月初め“今年は豊漁”と報じられたスルメイカ。わずか1カ月もたたずに、そのイカが取れなくなったといいます。
漁業の現場で今、何が起きているのでしょうか?

豊漁なのに、スルメイカ漁停止

そもそも、例年不漁が続き漁獲高が少なくなってきていたスルメイカですが、今年は豊漁だったはず…。

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取材スタッフ(10月2日取材):
こちら日立にある鮮魚店では、たくさんのスルメイカが盛られています」

10月上旬 茨城・日立市の鮮魚店にはスルメイカがたくさん並んでいた
10月上旬 茨城・日立市の鮮魚店にはスルメイカがたくさん並んでいた

10月2日に『サン!シャイン』が茨城県の漁港を取材したときには、現場から“うれしい悲鳴”が聞こえていました。

がしかし、同じ10月の下旬、スルメイカ漁が盛んな北海道函館市の鮮魚店には「今年最後のイカになるかも…」の文字が。

10月22日北海道・函館市の鮮魚店「今年最後のイカになるかも…」
10月22日北海道・函館市の鮮魚店「今年最後のイカになるかも…」

観光客でにぎわっているはずのイカの釣り堀の水槽にはカバーがかけられ、休業状態となっていました。

その理由は、水産庁の決定にありました。
水産庁は11月1日から2026年3月まで小型船によるスルメイカ漁の停止を命じたのです。
停止の理由は、「豊漁により年間の漁獲量の上限に達したため」。

実は、北海道や青森県などの漁師たちは豊漁の恩恵を受けていないというのです。

「漁獲枠が増えた恩恵は何もない」

日本近海のスルメイカ漁は太平洋側と日本海側、両方で行われていますが、漁場は秋から冬にかけて徐々に北上していきます。

今年は豊漁だった影響で、北海道でやっと漁が始まったタイミングで、全国の漁獲高が上限に達してしまったのです。

そこで、函館市や青森県などは漁獲枠の拡大などを求める要望書を提出。
11月5日に行われた水産庁の審議会で「小型船の漁獲量を4900t から5757t に増枠する」と決定しましたが…、10月24日の時点ですでに漁獲量は5896t に達しており、漁の停止は解除されませんでした。

『サン!シャイン』の取材に応えてくれたのは、青森県三沢市漁協の組合長です。

三沢市漁協 熊野稔 組合長:
なんで、もうちょっと(漁獲枠を)増やせないの?もうちょっと増やせば、みんなが操業できるんですよ。
とても怒り心頭ですよ。(漁獲枠が)増えた恩恵は何もありません。
(漁ができないことに)驚くっていうよりもがく然とした悔しさっていうか。

なぜ、漁獲量をもっと増やせないのでしょうか?
水産庁によると、毎年2月に科学的な根拠となる資源評価に基づき4月からの漁獲枠を設定しているため、増枠には科学的な根拠が必要だといいます。
現状、スルメイカの資源状況は“非常に悪い”という科学的評価になっており、漁獲枠は増やせないということです。
ただ、小型船以外の漁獲枠はまだ上限に達していないため、水産庁は当事者間で融通の促進など話し合いの場を設けられるようにしたいとしています。

「スルメイカは全くない」飲食店にも影響

すでに、スルメイカ漁停止の影響は、食卓や外食産業にも波及しています。
11月6日、『サン!シャイン』取材班が向かったのは「活イカ」が看板メニューの都内の飲食店。

日本橋イカセンター 従業員:
いま到着したばかりです。アオリイカです。
――スルメイカじゃなくて?
アオリイカです。
スルメイカは全くないです。(スルメイカは)メインで北海道の方から入ってきてるんですけども、2週間弱入ってきてないですね。

この時期の定番メニュー「スルメイカのお造り」が提供できない状況になっていました。

日本橋イカセンター 従業員:
お客さまにスルメイカの提供ができないっていうのが心苦しいですね。そこが一番ですね。
(「サン!シャイン」11月7日放送より)