全国各地でクマの出没が相次いでいる。富山・砺波市で5日、暗闇を歩く1頭のクマをカメラが捉えた。さらに同日午後、黒部市の宇奈月温泉近くでも親子グマとみられる2頭が確認された。一方、秋田・大仙市では4日、72歳の男性が自宅敷地内でクマに襲われ、太ももを爪で引っかかれ負傷した。一部地域では自衛隊が派遣されているが、対策が急がれる。
各地でクマの出没止まらず…負傷者も
暗闇の中をのそのそとクマが歩いている。
5日午後10時半頃、富山・砺波市の山あいに設置されたAIカメラが捉えた映像だ。クマは獲物を探しているのか、暗く静まりかえる山道をゆっくりと移動していた。
同日午後4時頃、同じ富山県の黒部市では、美肌の湯として知られる宇奈月温泉のホテルのすぐそばにもクマが出没している。

山の斜面からクマが降りてきた。向かう先には親グマだろうか、もう1頭のクマの姿があった。
さらに人的被害が深刻な秋田・大仙市では、クマに襲われ負傷者が出た。

クマに襲われた男性(72):
ここ(小屋)から出たんですよ。そしたら(クマが)走ってきたんですよ。走ってきて太もものところをやられた。

クマは4日朝、秋田・大仙市に出没した。男性が敷地内の小屋から出ると、体長約1.3mのクマに背後から体当たりされ、太ももを爪でひっかかれたという。
クマに襲われた男性(72):
まさか自分が…いろんなところで(クマが)出ているとは聞いていたが、いざ目の前に(クマが)来ちゃうと一瞬だから、本当に何秒(の出来事)。

2025年度のクマ被害による死亡者数が過去最悪の13人となる中、政府は環境省や防衛省、文部科学省など関係する9つの省庁による2回目の連絡会議を開催した。
11月中旬までの見直しを目指している「クマ被害対策の政策パッケージ」について話し合われた。

環境省の職員:
11月中旬までということでもう時間がない。お互い一丁目一番地の政策として、しっかりやっていければと思う。
自衛隊が派遣されるなど、クマ被害は災害級の脅威となっている。
過去には自衛隊がクマ駆除に派遣
自衛隊は過去にも人を襲う凶暴なクマを駆除するため、現場に派遣された経験がある。

1962年当時のニュース:
突然家畜を襲ったり、農作物を荒らしたり、このところ頻々と出没するクマに音を上げた北海道・標津郡。ハチミツもこれでは台無しです。
1962年、北海道・標津町は当時の報道によると、ヒグマに襲われ2人が死亡し、自衛隊に災害派遣を要請した。
1962年当時のニュース:
通学も護衛付き。この黒い侵略者にいよいよ宣戦を布告することになりました。
銃に短剣を装着する自衛隊員がクマが出没する山に分け入り、わなを張り巡らせていく。
1962年当時のニュース:
しかし空気を察してか、クマはさっぱり寄りつきません。夜に入ってサイレンを鳴らし、敵が侵入するのを防ぐ自衛隊員。闘いはどうやら持久戦となりそうです。
クマは自衛隊の協力もあり、最終的にはハンターが銃でクマを駆除したという。
凶暴化したクマを巡っては、2021年にも北海道・札幌市で住宅街に現れ次々と人を襲い、4人の負傷者を出す事件が起きた。
取材班(2021年6月):
あ!いたいた!クマがいます。住宅街の近くに家の間をクマが歩いています。クマがゆっくりと歩いていきます。
クマは突然、住民を背後から襲った。
そして住民を襲撃したクマは次に道路に向かった。
取材班(2021年6月):
今道路を横断しようとしています。非常に危険です!
襲いかかったのは住民だけではなかった。
取材班(2021年6月):
今、自衛隊の敷地内です。自衛隊の門に入ろうとしています。自衛隊員が逃げています。
4人の犠牲者を出したクマや66頭もの牛を襲ったクマも
凶暴化したクマによる深刻な被害は、他の場所でも起こっていた。

今回、自衛隊が派遣された秋田・鹿角市では2016年、スーパーKと呼ばれるクマが次々と人を襲い、4人の犠牲者を出した。

さらに暗闇で目を光らすのは、怪物ヒグマとして日本中が恐れたOSO18だ。
北海道東部で2019年から4年に渡り66頭もの牛を襲い続け、ハンターによる捕獲作戦の末、2年前に駆除された。

当時撮影された写真で、後ろに止まった軽自動車と大きさを比べるとOSOの巨大さを物語っている。
なぜ山菜や木の実を食べるはずのクマが次々と人を襲うのか専門家に話を聞いた。

クマの生態に詳しい東京農工大学・小池伸介教授:
約40年かけてクマの分布域はじわじわ広がってきて、今の人とクマの距離は近すぎるわけです。クマからすると人はそれほど怖くない。あまり気にならないような存在になっている可能性があって、今手を打つ必要があるということですね。
(「イット!」11月6日放送より)
