選手たちが異なる見え方を補いながらプレーする、ロービジョンフットサル。その日本代表でキャプテンを務める男性が熊本にいる。弱視というハンデがありながらも競技や仕事に打ち込むバイタリティーあふれる姿を取材した。
日本代表キャプテンの赤﨑蛍選手
視覚しょうがい者スポーツは目の見えにくさの程度により、光を感じられる程度までの視力がB1、矯正後の視力が0.03までがB2、矯正後の視力が0.1までのB3と、主に3つのカテゴリーに分かれている。

その中でロービジョンフットサルは、B2・B3クラスの人が参加できる競技。通常のフットサルとルールは同じだが、それぞれが多様な見えにくさを抱えているため、選手間の信頼関係が求められるチームスポーツだ。

熊本・合志市出身の赤﨑蛍選手は、パリオリンピック男子マラソンで8位入賞を果たした赤﨑暁選手のいとこで、ロービジョンフットサル日本代表のキャプテンを務めている。赤﨑選手は「視力検査で元々A判定だったが、『視力が悪くなっているね』と当時の先生に言われ、病院を勧められて分かった」と話す。

成長するにつれ、見えにくさが進行する指定難病の一つ『黄斑ジストロフィー』と診断された。高校時代はサイドバックやボランチとして、東海大星翔高校の1軍でプレーしていたものの、練習中に違和感を覚えたという。

赤﨑選手は「ディフェンスをするときのロングボールに対応しなきゃいけない場面でたくさんミスをした。視界の真ん中に邪魔が入ったような見え方、視野は普通で『B3』」と話した。その後、進学した熊本盲学校で、ロービジョンフットサルの存在を知ると、わずか1年ほどで日本代表デビューを果たした赤﨑選手。現在はキャプテンを務めている。

この日はトルコでの世界選手権の出場報告のため、県庁を表敬訪問。木村知事も、選手たちの視点を再現するゴーグルを着用し、競技の難しさを体験した。木村知事は「それぞれの違いを理解して、パスの出し方とか、ボールのあげ方とか、それぞれの選手がお互いを知らないといけないから」と話した。
赤﨑選手の代表活動を後押しする職場環境
赤﨑選手が働く白鷺電気工業。赤﨑選手は「cadというソフトで図面を描いている画面」と話し、見えづらさを補う拡大モニターを使い、電気工事用の図面作成などを行う。

そんな赤﨑選手だが、月曜から金曜までは業務のため出勤、土・日は代表活動のため東京で練習という超ハードスケジュール。赤﨑選手をバックアップするため、会社も年次有給休暇とは別の新たな休暇制度を設け、代表活動を後押ししている。

沼田幸広社長は「チャレンジ休暇制度を設け、最大10日間の有給。『自分は日本代表で頑張ってくるから有給をください』と赤﨑選手がプレゼンして満場一致で10日間の有給が決まった」と話す。

そんな赤﨑選手について同僚の芝田亜莉沙さんは「誰とでも打ち解ける、スッと懐に入ってくるすごいキャラクター」と話し、同じく同僚の井田賢利さんは「堂々と人前でも話すし、先輩後輩もあまり関係なくフランクに、気さくに話してくれるので尊敬している」と話した。

取材したこの日は、翌日から代表の練習があるため、時間休を取って退社。移動のためくまもと空港へ向かう車の中で、赤﨑選手は「ものすごくありがたい環境を職場が用意してくれて、身体的にきついときも休みをとれるような体制をつくってくれているので、すごくありがたい。自分たちが世界を相手に戦っている姿を見て、多くの人たちの前を向く力になれれば」と話した。
赤﨑選手「メダル獲得がチームの目標」
コミュニケーションが重要なロービジョンフットサル。この日東京・小金井市での練習でも、キャプテンとして様々な場面で〈チームをよりよくしていきたい〉という姿が見られた。

中澤朋希選手は「プレー中の声かけやよりチームを鼓舞するような声、キャプテンになってより意識が高くなった」と話した。

また、前主将の岡晃貴選手も「プレーで示すということが、彼がやっていること。プレーで示してチームを引っ張る。赤﨑選手が一番、背中を見せてプレーしている」と期待する。

赤﨑選手は「2年前にあったイギリス大会では4位だったので、今大会はもう一つ上の表彰台、メダルの獲得をチームの目標に掲げている」と話し、目指すは日本勢初のメダル獲得だ。

赤﨑キャプテン率いるチームジャパンの戦いが、いよいよ11月6日にトルコで幕を開ける。日本ブラインドサッカー協会では、競技の環境整備や認知度向上などのため、クラウドファンディングで支援を募っている。
(テレビ熊本)
