北陸・新潟を拠点に地方空港を結ぶ路線を運航する「トキエア」や山陰にも路線を展開する「FDA(フジドリームエアラインズ)」など、地方と地方を結ぶ航空路線が注目を集めている。さらに新たな航空会社「ジェイキャスエアウェイズ」が、鳥取・米子と関西空港を結ぶ路線の2026年秋の運航開始を目指している。
地方同士の人の流れを生む仕組みを担う地域航空会社の現状を探った。
“先駆者”FDAが開拓する地方路線
2009年に運航を始めたFDA(フジドリームエアラインズ)は、島根県の出雲空港には2015年に名古屋・小牧便が就航。
現在は中部、静岡を加えた3つの路線を運航している。
FDAの本田俊介社長は「観光資源であり、食であり、いろんなものが揃っている地域だと思ってますので、まだまだ伸びしろがある」と語る。
2025年6月に就任した本田社長は、日本航空で国内路線や地域事業の責任者を歴任し、2025年3月まで地方路線を担う子会社「ジェイエア」の社長を務めた経験を持つ。
FDAは静岡空港と名古屋・小牧空港を拠点に、定員80人前後の小型機を使い、東北、九州などの地方空港を中心に乗り入れる地域航空会社だ。
これまで人口の流動が少ない地方と地方を結ぶ路線に積極的に参入し、需要を掘り起こしてきた。
「需要を作っていく。ここが1番のローカル線の難しさ。行く理由を作る、来てもらう理由を作っていくということを考えながらやっていく。それが今日本全体に求められている」と本田社長は指摘する。
地方路線に新たな風…「トキエア」と「ホリエモン」
コロナ禍を経て「リモートワーク」が定着し、航空業界ではビジネス需要が約2割減少したのに加え、燃料や人件費が高騰。
経営環境は厳しさを増しているが、一方で地方路線に新たな風が吹き始めている。
新潟が地盤の地域航空会社「トキエア」の取締役に就任したのが、"ホリエモン"こと実業家の堀江貴文氏。
「佐渡は世界遺産だし『1回は行ってみたいよね』と思っている人は結構多い。佐渡に就航するとめちゃくちゃいい」と語りその可能性を語っている。
トキエアは、2024年1月に運航を始めた新興の地域航空会社で、新潟を拠点に札幌、中部、神戸の3路線を運航している。
発信力のある実業家、堀江氏を迎え、今後、小型航空機の製造事業など新規事業への参入も構想しているという。
「空の毛細血管」に…地方路線に進出「ジェイキャス エアウェイズ」
このトキエアに続いて地方路線に翼を伸ばそうとしているのが、ジェイキャス エアウェイズだ。
2018年に設立された地域航空会社で、関西空港と米子・富山とを結ぶ新路線で2026年秋の運航開始を目指している。
梅本祐紀代表は「大阪含め都市部と地方を結ぶ。そういう地方路線っていうのがまだまだ足りない。“空の毛細血管”のような役割を果たしていきたい」と意気込む。

運用効率を上げるため、定員86人のターボプロップ機を導入する予定で、国内の約50路線から、採算性や観光の可能性などを分析し、鳥取県西部の米子と北陸の富山を就航先に選んだ。
「山陰の方々に、大阪に行くときは『ジェイキャス』に乗ったら便利だし、早いから使おうと。まず国内の方に使っていただいて、インバウンドで関空から山陰とか富山に人がどんどん流れるという2階建ての構造で考えています」と梅本代表は説明する。

JR並み平均1万1000円の価格設定 地方航空路線成功の鍵は
海外からの玄関口、関西空港と結ぶことでインバウンド需要を取り込み、年間平均1万1000円と、JRに引けを取らない水準の運賃を設定する方針だ。
より厳しい環境の地方対地方の路線で、成功のカギを握るのは何か。トキエアの堀江取締役は「地方はブランディング変えるだけで宝の山ということに当の日本人が気が付いていない」と指摘する。
トキエアでは佐渡への新路線を計画し、「世界遺産」の看板を生かし、新たな需要を掘り起こす考えだ。
ジェイキャス エアウェイズの梅本代表も「やはりその土地がいいと感じてもらえるのは、コンテンツ、地元の魅力あるコンテンツ作りをどれだけ一緒にできるかだ」と語り、山陰の観光資源の「潜在力」に期待している。
一方、先行するFDAの本田社長は、外国人利用率10%の目標を掲げた上で、「どちらかというと(外国人観光客が)山陰はまだ少ない。そういう意味では伸び代もたくさんあると思っています。地元の方々と一緒になって、総合力で人を呼び込むことを考える必要があると思います。地域に行く理由を作っていく、そしてそこに行く仕組みがある。これがセットであるべきだ」と語り、「宝の山」を掘り起こすには、「地域を挙げて」の取り組みが欠かせないと指摘する。
歴史や文化、そして豊かな自然に恵まれた山陰地方。
身近にある「宝の山」を生かすことができれば、山陰への「空の道」は、さらに広がるかもしれない。
(TSKさんいん中央テレビ)
