「小1プロブレム」という言葉をご存じだろうか。この問題に対応するため、来春小学校に入学する園児の不安解消に向けた幼保小連携の取り組みが本格化している。体育や英語の「あそび」を共通化することで、新しい環境へのスムーズな適応を目指す。

幼保小連携で「小1プロブレム」解消へ
「小1プロブレム」とは、幼稚園・保育園から小学校への環境変化に子供が適応できない状態を指す。この問題に対し、宮崎県都農町では今年度から、幼稚園・保育園・小学校が連携し、子供たちが新しい環境にスムーズに適応できるよう支援する取り組みを開始した。

体育あそびで小学校への橋渡し
都農町にある信楽寺保育園では、年長の園児6人が、マットの上で転がったり、室内を走ったり、体を思いきり使って「体育あそび」を楽しむ姿が見られた。

インストラクターとして派遣されたのは、総合型スポーツクラブを運営する「都農enjoyスポーツクラブ」の河野仁志さん。小学校でも共通して行われるような動きを取り入れた「体育あそび」を提供した。

「体育あそび」インストラクター 河野仁志さん:
小学校に行っても いろいろなスポーツをすると思うのですが、それに共通するような動きを取り入れて(体育あそびを)やりました。
河野さんはこのあと都農町の小学校にも派遣され、体育の授業の一環として同様の「体育あそび」を行う予定だ。

この取り組みのメリットは、保育園や幼稚園の子供たちが小学生になった後も同じ指導者から教わることができる点にある。子供たちが小学校入学後の環境変化にスムーズに適応できることが狙いで、文部科学省も推奨する取り組みだ。

都農町教育委員会 森崎陽介指導主事:
(幼保小で)同じ運動を取り入れていくことで、(子供が)小学校に上がっても同じことをするんだ、ワクワクするなとか楽しみだなということにつながればいいなと思う。

英語あそびで早期からの慣れを促進
また、都農町立中央保育所では「英語あそび」が行われた。講師として派遣されたのは、都農町の小学校で英語を教えているALTのTeal高橋さん。

Teal高橋さんは、「小学校や中学校に進学したときに英語に慣れるために、幼い頃から英語を始めるのはとても良いことだと思う」と話す。

この日、子供たちはハロウィーンにちなんだ単語を学んだり、いす取りゲームを通して英語でのコミュニケーションを楽しんだりした。同保育所では、Teal高橋さんによる英語あそびを今年度に入って7回実施している。

都農町立中央保育所 寺原紀美代所長:
(Teal先生が)顔なじみというか安心して一緒に英語を楽しんでできるというところが、やはり子供たちの笑顔を引き出しているんだなと感心しているところ。
環境変化が子供の不安を招く
一方で、小学校入学に対する不安の声も聞かれる。ある子供は、小学校入学にあたり「お勉強」が心配だと答えた。

幼稚園や小学校で体育教師として子供たちと関わってきた宮崎大学の三輪佳見名誉教授は、小学生になると学習内容や方法が幼稚園とは大きく変わる点が、子供の不安の原因になっていると指摘する。
宮崎大学 三輪佳見 名誉教授:
決まった時間、教室に座って学習しなければいけないということ。学習の内容も方法も幼稚園とはガラッと変わってしまうという点が、子供にとっては問題を抱える原因になっていたのではないか。
連携による子供の不安解消への期待
都農町が始めた幼・保・小連携の取り組みについて、三輪名誉教授は次のように話した。

宮崎大学 三輪佳見名誉教授:
最初のきっかけとしては、非常にいいのではないかと思う。(子供が)小学校に入ってきたら、じゃあ、こんなふうにこのことをこういうふうに教えたらうまくいくかな、ということを、ちゃんと(先生側も)入学前に分かっているということが、一番大事なんだと思う。

地域の大人が連携し、子供たちの不安を軽減することを目指すこの取り組みは、少子化が進む現代において、子供たちを守るためにますます求められている。
(テレビ宮崎)