身長144センチという小柄な体で”世界”に挑む福岡・糸島市出身の24歳の女性。自在にボールを操り、大きな夢を追い続ける姿を取材した。
世界トップ8 アジア人女性 初の快挙
恐竜を象った緑色のニット帽をトレードマークにしている安武舞さん。安武さんが熱い姿勢で取り組んでいるのは、サッカーのリフティングやドリブルなどの技術を“魅せるパフォーマンス”へと進化させた競技、フリースタイルフットボールだ。

安武さんは2025年8月、英・ロンドンで開かれた世界大会に出場し、1対1で勝敗を決めるバトル部門でベスト8に、さらに別の部門では3位に輝いた。いずれもアジア人女性として初めての快挙だった。

安武さんが競技を始めたのは中学生の頃。「男子が殆どのサッカー部に入部したので、なかなか試合に出たり、練習に参加したりできなくて、ずっと1人でできるリフティングを『とにかくこれだけはせめて1番になろう』みたいな気持ちで始めた」

「いろいろと技をやっているうちに『それフリースタイルフットボールっていうんだよ』って教えてもらって」と安武さんは当時を振り返る。そして知らない間にのめりこんでいった。

高校時代は初めて参加した大会で、初戦敗退の悔しさを味わったが、大学では同じ大会で優勝、2年前に初めて世界大会に出場したのだ。
自分だけのスタイルを追及
「この競技を始めた頃は、リフティングができても『時間を無駄にしているよ』とか『もっとお金になることに時間かけなよ』とか言われることも多かったけど、自分でやりたいことをただただ突き詰めて、10年続いたことによって、全然、想像していなかった世界に行けている」と話す安武さん。

さらに「フリースタイルという名前のまま、全然、既存の技をしてもいいけど、自分で新しい技を作ってしまってもいいところが、この競技のすごい面白いポイントで、すごい魅力かなと思う」と話す安武さん。いまでは、ブレイクダンスの動きを取り入れながら自分だけのスタイルを追及している。
会社員&映像クリエイターの顔も
現在は、大手企業でマーケティングの仕事をしながら副業でフリーの映像クリエイターとしても活動している。

「いまは映像を作るにあたって、モーションを作る前の土台のデザインの部分を作っている。大学時代に同級生にめちゃめちゃ映像上手い子がいて、その子に教えてもらいながら、ちょっとずつスキルを学んでいった」と話す安武さん。

平日の夜や週末は、副業に時間を費やし、その合間に練習するという生活を続けているのだ。「頭が疲れたら運動して、運動して体が疲れたらまた頭の作業に戻って、ということを繰り返すと、意外とリフレッシュにもなってちょうどいいかな」と安武さんは笑う。

フリースタイルフットボールは、ボールの周りを足でまたぐ『エアームーブ』。

ボールを足で挟む『クラッチ』。

そして肩や首などの上半身でボールを扱う『アッパー』など、さまざまな技を自由に組み合わせてパフォーマンスする。

安武さんは、時間があれば、仲間とともに技を磨く日々が続いている。
「おばあちゃんになるまで続けたい」
世界で活躍する安武さんだが、一度も成功したことがない練習中の技がある。

世界大会の出場経験を持つプレイヤー、長﨑翔太郎さんにお手本を見せてもらった。ボールを右足で1回跨ぎ、もう1回右足で跨いだ後に、左足で1回跨ぐという技だ。

「この技を半年から1年、練習していて。回し技は、やっぱり男の人の方が、筋力があるので得意」と話す安武さんだったが、半年以上かけて練習してきた足技を、この日ついに成功させた。

「できました!足技が、一番弱いポイントではあるので、どんどん克服していきたいと思う」と安武さんの表情に明るさが蘇る。
長崎さんも「ハングリー精神強いし、ストイックで、お互い、仕事してる身だし、そのなかであれだけ練習して、世界でも活躍してという、僕の一つの目標でもあるので、尊敬の存在ですね」と安武さんを称賛する。

仲間が尊敬する存在でもある安武さん。10月に行われたアジア大会では準優勝に輝き、12月にポーランドで行われる世界大会への出場も決まっている。

「まずは女性部門での世界一を目指して、その後に、男女混合でも世界一になりたい。おばあちゃんになるまで、この競技を続けたいなと思っています」
※映像提供『the World Freestyle Football Association and Ultimate Street Football』『the World Freestyle Football Association and IF3』
(テレビ西日本)