観光客でにぎわう京都・嵐山。その観光名所「竹林の小径」で、横行している迷惑行為が“竹への落書き”です。

「newsランナー」の独自調査では、300本以上の竹に落書きが見つかりました。

【京都府立植物園 樹木医】「傷がつくことによって、そこの細胞はもう再生することはない」

人気観光地での「落書き行為」。その実態に迫ります。

■「落書き禁止」を呼び掛ける看板も効果なし アルファベット、ハングル、カタカナ、数字などで落書き

【記者リポート】「嵐山にきています。多くの観光客でにぎわっています」

暑さも和らぎ、大勢の観光客が訪れる京都「嵐山」。このエリアでシンボル的なスポットとして人気なのが「竹林の小径」です。

【記者リポート】「嵐山の観光名所“竹林の小径”に来ているのですが、外国人観光客の姿が多くあります。非常に多いです」

通路の脇に生い茂る青々とした竹。空を覆う竹林が整然と立ち並ぶ様子は、まるで“竹のトンネル”を歩いているようです。

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と、心が癒される京都の観光名所。

しかし「竹への落書き」という迷惑行為が相次いでいるのです。

【記者リポート】「見てください、落書きがあります。何かで削ったような跡です。書かれている文字はアルファベットです」

【記者リポート】「ハートマークの中にイニシャルのようなものがあります。カップルが記念に残したのでしょうか」

アルファベットやハングル、カタカナに数字などさまざまな文字が。

「落書き禁止」を呼び掛ける看板も設置されていますが、残念ながら効果はないようです。

落書きの中には「ECO」と書かれたものもありましたが、全然エコではありません!

中には上から下までびっしりと「落書き」されている竹も。

■7年前から増え始め…300本以上も確認

実はこの“迷惑行為”、いまに始まったわけではありません。落書きは今から7年前、2018年ごろから増えはじめたといいます。

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この時点で、被害に遭った竹は、およそ100本ほどでした。

コロナ禍で、いったん落書きは減りましたが、ここ最近、再び増え始めたということです。

実際に取材班が落書きされた竹の数を調査してみると…なんと!300本以上の竹で確認されました。

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■落書き隠す“養生テープ” 人力車に啓発ポスターで対策も

京都市が10月行った調査でも、落書きが見つかった竹は少なくとも350本。

竹林の一部には、落書きを隠すため養生テープが張られたものがありました。

テープを張っているのは、この辺りの竹林の管理も行っている人力車の「えびす屋」のスタッフ。

運営会社の満井さんに話を聞きました。

【えびす屋總本店 満井一貴さん】「見栄えも良くないですし、できれば(養生テープは)したくはないですけど、落書きされているよりは、貼ってるほうがましかなと」

(Q.だいたい何年前から始まった?)
【えびす屋總本店 満井一貴さん】「7~8年前かなという気はするんですけど。この1年、2年ぐらい増えてきたかなという気はしますね。何か先のとがったもので、傷を入れているのが多いです」

「えびす屋」の人力車に啓発ポスターを張っていますが、落書きは後を絶たず。

【えびす屋總本店 満井一貴さん】「隠して、また違う所に(落書きを)やって隠して、貼っても貼っても繰り返しなので、やっぱり我々もきれいな景色を見ていただきたいので、こういう落書きはやめてほしいと思います」

■竹の生育にも影響 「傷ついた細胞は再生しない」

景観を損ねるだけではなく、竹の生育にも影響があるそうで、取材班は、京都府立植物園で専門家に話を聞きました。

【京都府立植物園 樹木医・中井貞さん】「表面も全て植物細胞で成り立っていて、傷がつくことによって、そこの細胞はもう再生することはない」

(Q.以前の色を取り戻すことは難しい?)
【京都府立植物園 樹木医・中井貞さん】「その箇所が再生するということはないですね。植物に傷をつけるというのは、やめていただきたい」

■傷つけられた竹が人に被害を及ぼす可能性も

さらに、「落書きによって竹が倒れる危険もある」と指摘します。

【京都府立植物園 樹木医・中井貞さん】「(落書きが)少しの量であれば、それほど影響はないかと思いますが、それが全体に行き渡るような感じで傷がつくと、その植物体全体が、いわゆる『光合成』をしてるんですけれども、できづらくなって、枯れてしまうことが考えられる。放っておくと倒れてしまいます」

人の手で傷つけられた竹が、いずれ人に被害を及ぼす恐れもあり、京都市は「落書きをされた竹の伐採も検討している」ということです。

人気観光地での許しがたい「迷惑行為」。訪れた人、一人一人のマナーが問われています。

■落書きは「器物損壊」になることも 藤井教授「罰金取る制度も必要では」

竹への落書きは「器物損壊罪」になる恐れもあり、有罪になると3年以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金・過料となります。

京都大学大学院の藤井聡教授は、「落書きは犯罪であるということを示して、また5~10万円とかしっかりした罰金を取るという制度も作って、『見つけたら罰金』ということも示して、時折パトロールをして取り締まるようなことがあれば、なくなっていくのでは」と指摘しました。

罰則を強化して抑止につなげるのは悲しいことですが、必要になってくるかもしれません。

(関西テレビ「newsランナー」2025年10月17日放送)

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