クマに襲われたとみられる男性従業員が行方不明となっている、岩手・北上市の瀬美温泉。
北上市猟友会・鶴山博会長:
(遺体と)同じ所にクマが居座っていた。人を食べるっていうのは初めてです。
この秋、列島各地でクマの目撃が相次ぐ中、温泉で従業員を襲ったクマは10月8日にも人を襲った「人食いクマ」の可能性が浮上。
現場となったのは、宿が美人の湯と誇る露天風呂。
17日朝も警察や猟友会など約40人態勢での捜索が続く中、事態が大きく動いたのは午前9時過ぎのことでした。
現場近くの山林で1人の遺体を発見。
そばには、体長1.5メートルほどのツキノワグマが1頭いて、猟友会がその場で駆除したということです。
北上市猟友会・鶴山博会長:
(Q.発見場所)露天風呂から引きずって、向かいの斜面を100メートルくらい登ったところに連れて行かれた。現場を見れば、なんでこんなところに引っ張って持って行ったんだろうかなって。
クマをよく知る地元猟友会も首をかしげる今回の事件。
当時、男湯の露天風呂を清掃していた笹崎(崎は立つさき)さん。
女湯との仕切り近くの柵に獣の毛が10本ほどついていたことから、クマはここから露天風呂に侵入したとみられています。
風呂の周囲には眼鏡やスリッパが散乱。
複数の血痕が残されていたことなどから、クマはもみ合いとなった笹崎さんを引きずって、再び柵を乗り越え川の方向に逃げたとみられています。
北上市猟友会・鶴山博会長:
信じられないです。(クマが)露天風呂に来て人を引きずっていくっていうのは、まず普通ないんですよ。(遺体は)かなり損傷が激しかったようなので、餌だと思って運んでたんだから、こないだの(事件)とやり方が似ているので同じクマじゃないかと。
猟友会の鶴山会長が被害状況が似ていると指摘したのは10月8日、同じ北上市の山林でキノコ狩りに出かけていた73歳の男性がクマに襲われ遺体で見つかった事件。
遺体には、クマの爪痕やかまれた痕がありました。
前回の現場と温泉旅館は直線距離で2kmほど。
17日に発見された遺体も損傷が激しいということで、猟友会では同じクマが再び人を襲ったのではないかとみています。
北上市猟友会・鶴山博会長:
(Q.ツキノワグマは?)大概は人を襲って逃げていくだけ。人を食べるっていうのは初めてですので…。
警察は午後2時から駆除したクマの解剖を実施。
この解剖に立ち会った岩手大学農学部の山内貴義准教授は、「おなかの中全部開けたが、植物性のものは全然入ってない、種とか。普通は今の時期は植物、どんぐりをはじめ、そういった物を中心に食べる。オスの成獣。比較的体格の良い個体。ただ今の時期にしては脂肪はあまり乗ってないような感じ。人を食害するために襲った可能性は否定できない」と話します。
解剖したクマには体に脂肪分が蓄えられておらず、人を食べるために襲った可能性があると指摘しました。
ヒグマに比べて植物を多く食べるとされるツキノワグマ。
しかし、2016年の秋田・鹿角市では、クマに人が襲われたとみられる死亡事故が4件発生。
この時、駆除されたメスのツキノワグマの胃の中から人のものとみられる肉片が見つかっています。
午後4時半、北上市長が会見。
事件の3日前の13日にも同じ温泉で宿泊客が露天風呂からクマを目撃していたことが分かりました。
見つかった遺体は損傷が激しく、警察が身元の確認を進めています。