立山町が富山県内で初めてとなる「宿泊税」の導入を目指し、17日に初会合が開かれた。町は2027年4月からの導入を目標としており、観光客受け入れ環境の整備に充てる考えだ。

宿泊税とは何か
宿泊税とは、ホテルや旅館を利用する観光客などから自治体が独自に徴収する税金で、現在全国42の自治体で導入されている。東京都や大阪府、近隣では石川県金沢市が既に導入している。

立山町内には山小屋などを含めておよそ50の宿泊施設があり、町は税収が年間数千万円になると試算している。この財源を富山地方鉄道・立山線の存続や立山室堂の救急体制の維持など、観光客の受け入れ環境の整備に活用する方針だ。
検討委員会での意見

17日に初会合となった検討委員会には、立山町の観光事業者や大学教授など6人の委員が出席。委員からは宿泊税の導入に理解を示す声があがった一方、「町の所有ではない民間の施設の利用で、税金をとっていいのか」という意見も出された。

立山町の舟橋貴之町長は「町の厳しい財政状況については理解いただけると思っている。多くの事業者(山小屋関係)にとってどういった事が課題なのか、それに対してどういう対応ができるのか、今後相談したい」と述べた。町は来月にも町内の宿泊事業者に対し、説明会を開き、理解を求めることにしている。
先行事例・金沢市の取り組み

北陸地方で唯一宿泊税を導入しているのが金沢市だ。兼六園や近江町市場などの人気観光地がある同市には、周辺も含め年間およそ1000万人が訪れる。


金沢市民税課の喜多泰正課長補佐によると「宿泊者数と観光の入込客数は増加傾向」にあり、「外国人観光客のほうが増加傾向にある」という。金沢市の宿泊客数は年々増加し、去年はおよそ420万人。そのうち外国人は84万人で、10年前の4倍以上となっている。

金沢市が2019年に宿泊税を導入した背景について、喜多課長補佐は「街に活気やにぎわいが生まれた一方で、一部の地域では交通混雑などが見られ、市民生活への影響が非常に生じていた。市民生活と調和した持続可能な観光振興を図る政策の費用のために宿泊税を導入」したと説明する。
金沢市の宿泊税の仕組みと活用法

金沢市の宿泊税は、1人1泊、5000円以上2万円未満の宿泊料金で200円、2万円以上だと500円となっている。年間の税収はおよそ10億円に達し、中心部の観光案内所の運営や、市民も利用できるシェアサイクルの整備などに活用されている。

「(公共シェアサイクルは)観光客にも利便性があり、市民の通勤の足にもなっている」と喜多課長補佐は利点を強調する。市は観光客の増加による渋滞の緩和などに役立て、市民と調和した持続可能な観光地を目指している。
観光客と宿泊事業者の反応

金沢市に旅行で訪れた観光客からは「楽しませてもらっている分、払うのは問題ない」という声があった。また出張で宿泊した人からも「(宿泊税を)役立ててもらって金沢が潤うのであれば必要」との意見が聞かれた。

一方で、市内のホテル・旅館などからは「宿泊税を徴収する際、英語や中国語だけでなく、多言語に対応する必要がある」という課題も指摘されている。金沢市では、様々な国から観光客を受け入れる体制をさらに整えていきたいとしている。
立山町の宿泊税導入に向けた動きは始まったばかりだが、地域の特性に合った制度設計が求められている。