「家庭の中でお母さんの役割って太陽みたいなものかな」――自家製野菜をたっぷり使った料理を提供する富山市のカフェ「おてんと」。店名に込められた想いと、家族で作り上げた温かな空間を訪ねた。

全てをDIYで仕上げた古民家カフェ

富山市久郷、富山小杉線沿いに今年8月オープンした「おてんと」。古い民家を改装したこの店は、夫婦の手作りにこだわった空間だ。


「これね、リユースショップで見つけまして一目ぼれして」と話すのは、オーナーの高松梓さん。店内に足を踏み入れると、古い畳や手作りの家具が温かみのある雰囲気を醸し出している。
「親族が以前住んでいたものなんですけれども、古い畳があって夫が俺が作るって言いだしまして、大工さんを入れずにすべてDIYでお店を作ってくれました。テーブルとかも手作りです」

店の至るところに工夫が施されている。夫の高松哲也さんは「『おてんと』っていうお店の名前なんで、この太陽をモチーフにした階段の手すりというかロープを作ってみたりとか」と説明する。洗面台は月をイメージし、入口のドアは内側が月、外側が太陽のデザインで、店名の「おてんと」を表現している。


急な階段には昇降機まで自作するなど、細部にまでこだわりが感じられる空間だ。

自家製野菜が主役の「おてんとランチ」
店名の「おてんと」には、もうひとつ由来がある。それが、哲也さんの母・ひとみさんが育てる太陽の光をたっぷり浴びた野菜たちだ。

「これくらい大きくなっても柔らかいんですよね」とひとみさんが手に取るのは立派なオクラ。「長ナスおおきいの。里いもなんですけど…その日の朝に採ったのね、すぐ使ったりしてるから新鮮です」と話す。

この自家製野菜が、「おてんと」の料理の主役となる。

「安心安全な食材を使って、味付けとかもけっこうシンプルにしてるんですけど、オクラとかもおいしいと言っていただけるのでお母さんのおかげです」と梓さん。お米も自家製米を使用している。
畑から食卓へ、旬の野菜の饗宴

取材日に提供されていたのは、週替わりの「おてんとランチ」。一枚のプレートに、その日の畑の恵みが色とりどりに盛り付けられていた。
この日のメインは「ユーリンチー」。自家製オクラを使ったピリ辛和えに、大きなナスが食べ応えあるペンネも添えられている。畑で採れた新鮮野菜を使った小鉢が4品並び、自家製米の上には、こちらも自家製のナスで作った「ナス味噌」が添えられていた。
一皿に詰まった色とりどりの料理は、まさに畑の恵みをそのまま食卓に届けるという「おてんと」の想いが形になったものだ。
太陽のように温かな場所に

「家庭の中でお母さんの役割って太陽みたいなものかなと思っていてお母さんが明るくしていれば家庭がうまくいくんじゃないかなと、太陽みたいにお客様にもパワーをエネルギーを与えられたらという思いで」と梓さん。店名には、そんな想いが込められている。
哲也さんも「地域の方とかも来てもらっていつでも笑顔でわいわいできるようなお店になればいいのかなと思っています」と話す。