宮崎県で暑さに強くて美味しい新品種のコメ「南海189号」が開発された。近年、夏の猛暑によるコメの品質低下が課題となる中、次世代のエースとして期待が高まっている。
暑さに強い新品種「南海189号」開発

宮崎市の県総合農業試験場は、近年の高温傾向で品質低下が課題となっている普通期水稲において、次世代のエースとして期待される新品種「南海189号」を開発した。この開発は2011年から続いていた。

県総合農業試験場作物部 三枝大樹部長:
もともと「ヒノヒカリ」より粒は大きいけど、品種特性がしっかり出て大粒になっている。高温では「ヒノヒカリ」の等級が低下することもあり、新しい品種、特に高温に強い品種が望まれている。
ヒノヒカリとの比較と品質向上への期待
県内の生産者も「南海189号」に大きな期待を寄せている。

その理由は、宮崎県内の普通期水稲で栽培面積の約8割を占める「ヒノヒカリ」よりも夏の暑さに強いことにある。

県産「ヒノヒカリ」は、コメの等級で最も高い1等米の比率が年々低下しており、年によって変動はあるものの、10年前には66.8%だったものが昨年は7.9%まで低下した。
稲穂が出てから平均気温27度を超える日が20日以上続くと、でんぷん不足で濁って見える白未熟粒が発生しやすくなり、コメの等級に影響を与える。

三枝部長は、ヒノヒカリと「南海189号」を比較し、「令和7年度、農業試験場作物部で、同じ日に植えたもので見て頂きますと、ヒノヒカリの方が白い粒が7割ほど入っているのがわかると思う。それと比べて189号は概ね3割が白い粒という事で比べて、大きく差がある」と説明する。
生産者収入増加と栽培面積拡大への貢献

1等米が増えることで生産者の収入増加が期待されるだけでなく、政府のコメ政策が増産に転じる中での生産面のメリットも大きい。

「南海189号」は栽培期間が「ヒノヒカリ」より長いため、両方を一緒に植えたとしても収穫時期が重ならない。これにより、栽培面積の拡大にもつながる。
県総合農業試験場作物部 三枝大樹部長:
1等米が増えることで面積当たりの収益が確保できるので、引き続き経営規模を拡大する場合にも採算を考えやすい。今後、水稲生産者が減少していくので、そのなかでより面積を担っていただくため、品種の組み合わせが必要になってくる。
美味しさと病害への耐性も確認

さらに、「南海189号」は美味しさが「ヒノヒカリ」と変わらないことや、イネを枯らす「いもち病」に強いことも確認されている。
そこで県は今年から、えびの市や高千穂町など県内20カ所で実証栽培を実施し、来年度からの導入に向け準備を進めている。

三枝部長は、「地元の生産者に品種特性をしっかり分かって頂くため、現地実証に取り組んでいて、実際に南海189号を見て頂いて、周りの生産者に拡大する事を考えている」と話す。

県は9月、農林水産省に「南海189号」の品種登録を申請しており、5年後には県産の主食用米で約1割にあたる1240haまで栽培面積を広げる計画だ。
新品種の名称募集も実施
大きな期待が寄せられる「南海189号」、県はその名前を募集した。
応募期間はすでに終了しているが、これまでに4000件以上の応募があり、3月頃に発表される見込みだ。名前が採用された最優秀賞1名には、宮崎県産米60kgが贈呈される。
(テレビ宮崎)