キノコ狩りの女性が死亡 一人が行方不明

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10月3日午後1時半ごろ、栗原市の栗駒山でキノコ狩りをしていた人から、「仲間の女性がクマに襲われた」と、警察に通報があった。キノコ狩りをしていたのは70代の4人グループで、このうち、志水春江さん(75)が血を流して倒れた状態で発見され、病院に搬送されたが、死亡が確認された。また、別の女性は現在も行方不明となっている。4人は別々に行動していて、2人はクマに襲われたとみられている。

栗原市は通報を受けて、現場周辺に地元猟友会のメンバー3人を向かわせたが、女性を襲ったとみられるクマの発見には至っていない。

経営する飲食店で自ら採ったキノコを提供していた

関係者によると、亡くなった志水さんは、飲食店を営み、自ら採ったキノコを、店で提供していたという。

志水さんを知る男性は、「志水さんを悪くかたる人はいない」という。

男性自身もかつてはキノコ採りや山菜採りに現場付近を訪れたことがあり、山岳救助のボランティアにも参加したことがあるという。

志水さんを知る男性:
とにかくその辺はクマの餌場。そこに人が入っていったから。

2人と一緒に、キノコ採りに来ていた男性は、対策を講じていたと話す。

一緒に山に入った男性:
いつも入っている山で、よく分かっている。爆竹3発、クマよけに鳴らした。かえって爆竹がクマを呼んだのか。

捜索むなしく 栗原市長「非常に残念でならない」

ドローンなどを活用して捜索するも、手がかりは得られず
ドローンなどを活用して捜索するも、手がかりは得られず

警察などは、2次被害防止のため山の中には入らず、パトカーとドローンで女性の捜索を続けたが、手がかりは見つかっていない。また、ドローンの稼働も発生から1週間ほどで打ち切られ、パトカーによる定期的な巡回へと捜索態勢が変わった。

栗原市 佐藤智市長
栗原市 佐藤智市長

栗原市の佐藤市長も、思うように捜索が進まない悔しさをにじませる。

栗原市 佐藤智市長:
非常に残念でならない。早く発見してあげたかったが、現場のやぶが非常に深い。人海戦術で捜索できれば一番いいが、なかなかそれもできない悔しさがある。

そのうえで、今年は山に行楽へ行くことを自粛するように呼び掛けた。

栗原市 佐藤智市長:
キノコは毎年採れるが、命はひとつ。ここは我慢していただき、クマなどへの対策を講じてもらう他ない。

事故の発生後、現場近くには箱わなが2基設置され、1週間で子グマ2頭が捕獲された。
体長などから、2人を襲った個体とは別のクマとみられるため、わなの設置を継続している。

冬眠前でクマの活動が活発に

東京農工大学 小池伸介教授
東京農工大学 小池伸介教授

ツキノワグマの生態に詳しい、東京農工大学の小池伸介教授によると、クマが冬眠に入る前のこの時期、最も活動が活発になるという。

東京農工大学 小池伸介教授:
この時期がクマにとって非常に大事な時期。冬眠中のクマは飲まず食わずで過ごす。冬眠は寒いからするわけではなく、食べるものがないからするもの。餌を求めて、秋は最も活動時間が長くなり、行動範囲も広がる。

秋の時期のクマの主食はドングリ。山には数種類のドングリがあり、どれかのドングリが豊富になればいいというが、どのドングリもならないという巡り合わせの年もある

宮城県は、クマの餌となるブナの実が”大凶作”と予測されることから、クマ出没警報を10月末まで延長した。今年は、ブナ以外のクマの餌の不作も重なっている可能性があるという。

東京農工大学 小池伸介教授:
通常はクマが行かないようなところまで、食べ物を探しに行動範囲を広げる。集落の近くに行ったとき、収穫していない柿や栗、民家の倉庫に置かれた漬物など、クマにとって魅力的なものがある。そういったものに誘引されて森から出る、目撃が増える、出没が増える。

住宅の木の実 収穫や剪定で対策を

カキの木を剪定する業者
カキの木を剪定する業者

自治体などはクマに狙われるとして、柿の実などを回収するよう呼びかけているが、社会環境の変化で、難しい世帯があるのも実情だ。

仙台市宮城野区の住宅では、樹齢50年を超える柿の木の剪定が行われた。

剪定を依頼した宮本強さんが植えた柿の木。多い時では1年に1300個もの実が取れ、家族で食べたり、近所におすそ分けしたりしていたという。

こうした依頼は、年配の人だけでなく、実家から離れて暮らす、比較的若い世代からも増えているという。

クマから自分や周りの人たちを守るため、管理が難しければ、業者に依頼するのも講じられる対策のひとつだ。

クマ対策グッズの需要も高まる

クマよけのスプレーは品薄状態が続く
クマよけのスプレーは品薄状態が続く

アウトドア用品店では、クマ対策グッズの需要が高まっている。

モンベル仙台店 甚野清英店長:
クマの目撃例や被害が増えている影響で、対策グッズの売り上げも伸びている。

店にある対策グッズは、最大12メートル先まで届く「クマ撃退スプレー」や、車のクラクションよりも大きな音を出してクマが近寄るのを防ぐ「ベアホーン」など。

なかでも撃退スプレーは、10月の紅葉シーズンを前に、入荷からわずか数日で売り切れたという。

モンベル仙台店 甚野清英店長:
一番はクマに遭わないこと。対策品として、人間が登山していることをクマに分かってもらうためには、音を鳴らすことが重要。万が一出くわしてしまった場合、クマも驚いて向かってくる可能性があるため、そいうったときにクマ撃退スプレーで追い払うという備えが必要。

対策グッズのレンタルも行っているが、10月の予約はほとんど埋まっているという。

変わり始めるクマ対策の制度

9月から始まった「緊急銃猟」制度は、市街地に出没したクマに対し、これまでは警察の判断で許可されていた「発砲」を、一定の条件を満たした上で、市町村長の判断で可能とするものだ。

この緊急銃猟制度について、仙台市太白区では10月15日、住宅街に出没したクマがクルミの木に登るなど、約13時間にわたってその場にとどまったため、特に危険な状態だと市が判断。
全国で初めて、緊急銃猟制度にもとづいてクマが駆除された。

山形県の鶴岡市と米沢市でも2件、許可が出されたケースがあった。

小池教授はこのような制度改定について、捕獲に時間を要する箱わなの設置よりも、被害拡大を防ぐために有効だとする一方で、各市町村の態勢を見直す必要があると指摘する。

東北農工大学 小池伸介教授:
専門知識を持った専門的な職員を配置する。かつ、市町村、行政で捕獲に従事する人を雇用していくようなことをしていかなければ。
猟友会も高齢化が進んでくる。長期的には人材をどうやって育成して配置していくかということを考えていかないと、市街地出没には対応できない。

これ以上、クマによる人的被害を増やさないために。抜本的な対策を急ぐ必要がある。

※情報は2025年10月15日時点

仙台放送

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