10月14日は「鉄道の日」。1872年（明治5年）に日本で初めて新橋－横浜間に鉄道が開通した日です。
「昭和100年」にあたる今、時代とともに鉄道はどう変化してきたのか、福井を走った北陸線の“名列車”とともに、福井出身“鉄道好き”の紀行文ライター・蜂谷あす美さんの解説を交えて紹介します。
北陸トンネルの開通
北陸線の100年を振り返るにあたって、大きな“転換点”は1962年（昭和37年）の「北陸トンネル」の開通です。
＜当時のニュース映像＞
「北陸路へ差し込む“文明の光”を遮ってきた、この難所。北陸本線の喉元を締め付けていた岩山がいま、一挙にブチ抜かれようとしています。それが日本一のトンネル「北陸トンネル」です。総延長は13キロ以上。それまで蒸気機関車（SL）で越えていた敦賀―今庄間の「木ノ芽峠」。トンネルの開通に合わせて福井まで電化され、スピードと輸送力がアップしました。高度経済成長の鉄道需要に応えた電車が、北陸へとやってきたのです」
雷鳥が運行開始
そして1964年（昭和39年）、東京オリンピックの年に、関西と北陸を結ぶ特急「雷鳥」が運行を開始しました。
福井出身の紀行文ライター・蜂谷あす美さんは「やはりボンネット型が象徴的でかっこいいと子供の頃に思った」と、この雷鳥が鉄道を好きになったきっかけだと話します。
先頭車両の“鼻”が長い「ボンネット型」と呼ばれる特徴的な姿が、乗客やファンに愛されました。
旅行やビジネス、帰省と、多くの場面で乗客を運びました。
「特に学生の頃、あえて雷鳥ばかり乗った」という蜂谷さん。「一番好きな車両を聞かれると雷鳥と答えます」
寝台特急や豪華列車も登場
続いて、1968年（昭和43年）には寝台特急「日本海」が誕生。
青い客車の“ブルートレイン”と呼ばれた列車で、大阪―青森間（一時は北海道まで）を夜通し走りました。
「高校時代に部活動で青森に行くときに二段の寝台に乗って仲間と一緒に行った。カーテンで体を覆って外を見ていたら飽きなくて、寝ることすらできなかった思い出」（蜂谷さん）
この時代、都会と全国の地方都市を結ぶ交通手段の一つとして、多くのブルートレインが走りました。
そして1989年（平成元年）7月、トワイライトエクスプレス号が登場。
展望の良いサロンカーや本格的なフランス料理を味わえる食堂車、豪華な個室を備え、大阪と北海道（札幌）を結んだトワイライトエクスプレス。
バブル景気の華やかさの中で「移動を楽しむ“移動そのものが目的”なのが、この列車の特徴。ただの移動手段ではない豪華列車の先駆けだった」（蜂谷さん）といいます。
さらに、敦賀駅では“鉄道のまち”ならではの光景が。
「機関車を敦賀駅で付け替えることもあり、鉄道ファンにとっても“聖地”だった」（蜂谷さん）
また、特急の車両が新型に置き換わり始めたのも、1995年（平成7年）頃でした。
相次ぎラストラン
しかし、時代が進み2010年代になると、列車の引退が相次ぎます。
特急「雷鳥」は車両の老朽化などを理由に2011年（平成23年）、約半世紀の歴史に幕を下ろしました。
ラストランを見送る鉄道ファンは「遠くの家族に会いに行くときに乗った。寂しいな」と別れを惜しんでいました。
蜂谷さんも「寂しいという気持ちが一番大きかった。時代の転換点に立っていると感じた」と振り返ります。
その翌年、2012年（平成24年）には寝台特急「日本海」もラストラン。さらには、トワイライトエクスプレスも2015年（平成27年）、25年の歴史に幕を下ろしました。
背景には、交通ネットワークの変化も。「航空や高速バスなど、交通ネットワークが大きく変わっていった。さらに2015年に北陸新幹線が金沢まで開業したことも大きく影響した」と蜂谷さん。
そして2024年。
「出発進行！」
県内は“新幹線時代”に。新たな“県民の足”である「ハピラインふくい」も誕生。
そして、いま。新たな線路が北陸から関西へ延びようとしています。
その時代、時代を彩り、日常を支えてきた鉄道。昭和、平成、令和のいまも、これからも、人々を乗せて、走り続けます。
