富山県内の最低賃金が時給1000円を初めて突破した。働く側は収入増に喜ぶ一方、経営者は人件費と原材料費の高騰に苦しんでいる。
初の1000円超え、過去最大の引き上げ幅

11月12日から富山県内の最低賃金が998円から1062円に引き上げられた。県内では初めて時給1000円を突破し、64円という上げ幅も過去最大となった。最低賃金審議会は、コメを含む食料品などの物価高騰を踏まえて引き上げを決定した。
「値上げせざるを得ない」苦しい経営判断


富山市の飲食店「だいせん丸」では、10月に入りすべてのメニューの価格を引き上げた。富山湾の海の幸を使った刺身や天ぷらが人気で、平日は1日60人ほどが訪れるこの店だが、店主の本郷比朗竜さんは「いろいろ調整したが、価格に転嫁せざるを得ない状況」と話す。


社員2人とアルバイト3人を雇い、昼から夜まで営業する「だいせん丸」では、アルバイトスタッフの時給を1000円から1100円に引き上げた。
労働者には朗報だが経営側は複雑な思い

アルバイトスタッフは「うれしいです。おいしいご飯を食べたい」「(最低賃金)1500円を全国で目指しているというのも聞いた。そのくらい富山も上がってくれればうれしい」と喜びの声を上げる。

一方、雇う側は複雑な思いだ。本郷さんは「昼のピークタイムはどうしても(アルバイトに)手伝ってもらって営業する」「(人件費は)日々かかるものなので影響が出る」と懸念を示す。
人件費と材料費の「Wパンチ」

さらに店を苦しめているのが材料費の高騰だ。「今の場合はコメ。定食屋なので全てに使う」と本郷さん。

コメの高騰に加え、能登半島地震以降、漁獲量が減ったことで、仕入れ値が上がった魚も多いという。全体の材料費は、2年前の2倍近くまで膨れ上がった。
生き残りをかけた難しい舵取り

人件費と材料費の「Wパンチ」に直面する中、本郷さんはお客さんの理解を得ながらこの難局を乗り越えたいと話す。

「今の状態としては価格に転嫁せざるを得ない状況になったが、店に来てもらっておいしいとか、楽しく過ごせる時間をスタッフ一同提供していくのでよろしくお願いします」
アルバイトの皆さんには頑張ってもらっているので時給を上げてあげたいが、経営は苦しくなるというジレンマ。多くの飲食店は生き残るための難しい舵取りを迫られている。