児童わずか2人、それでも続く山里の運動会

過疎が進む大洲市河辺地区で「最後の希望」とも言える河辺小学校。全校児童はわずか2人だが、地域の人々が総出で運動会を盛り上げている。
「帰ってこられるふるさと作り」を目指す若者たちの挑戦も始まっている。

帰ってこられるふるさと作り
帰ってこられるふるさと作り
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大洲市の旧河辺村地区でただ一つの小学校

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「よーいドン」

山あいに響く大きな声援。大洲市の旧河辺村地区でただ一つの小学校だ。毎年秋の運動会は、地元の人たちも総動員し大盛り上がり。
一方児童は、6年生の梅木創哉さん、そして5年生の松本姫華さん。河辺小学校の全校児童はたった2人だ。

児童は梅木さんと松本さんの2人
児童は梅木さんと松本さんの2人

休み時間に楽しむカードゲーム

学校の休み時間はカードゲームを楽しむ2人。

梅木創哉さん:
(Q.休み時間何をしてる?)
「暇ですからいろんな…手を変え品を変えというわけでもないんですけど、暇してますね」

松本姫華さん:
「音楽の授業でいま習っているアコーディオンを練習したり」

梅木創哉さん:
(Q.河辺小学校の良いところ)
「学年の壁がなく話せる、みたいな」

松本姫華さん:
「大人数の遊びはできないけど、寂しいのは感じない」

暇してますね
暇してますね

去年3月に河辺中学校は閉校となった

地元で45年近く続く川魚の養殖場の3代目梅木健一さん。創哉さんの父で、小学校のPTA会長を務めている。河辺小学校の記念誌を見ながら健一さんは語る。

梅木健一さん:
「数字でいくと昭和49年当時は214人、令和元年には中学生9人」
(Q.河辺全体の子供の数?)
「そうですね」

今から50年以上前当時の旧河辺村には4つの小学校があり、河辺中学校には214人が通っていた。それが平成元年の1989年になると、69人と実に3分の1以下にまで減少。2019年にはついに生徒数が10人を下回り、去年3月、河辺中学校は閉校となった。

梅木健一さん:
「この10年で(子供が)一気に減ったイメージ。ひとつ大きな理由は河辺からだと高校進学で自宅からはなかなか通えない。きょうだいがいる家庭だと上の子供が高校進学する際に、一緒に高校の近くに引っ越してしまうことがあった」

減る児童数、高校進学の難しさ
減る児童数、高校進学の難しさ

山崎さんは、去年の春ふるさとの河辺にUターン

運動会を週末に控えたこの日。放課後のグラウンドで地域の人たちが準備を進めていた。山﨑翔太さん(31)は去年の春ふるさとの河辺にUターンした。

山﨑翔太さん:
(Q.Uターンの決め手は)
「一番は父も地元にいるので見えるところにいたほうが良いのかなと、地元に帰りたい、ホームシックではないですけど」

山﨑さんは地元の施設で市の職員として働くかたわら、同年代の若者らと協力し地域にイベントを誘致するなど河辺の魅力を発信、PRに取り組んでいる。

山﨑翔太さん:
「まずは河辺を知ってもらうことを始めないといけない、今はSNSが主流の時代なので『こういう所があるのか』と思ってもらえれば」

同年代の若者らと協力し地域にイベントを誘致している
同年代の若者らと協力し地域にイベントを誘致している

運動会には創哉さんの妹で幼稚園児の雫さんも参加する

有友正太さん(32):
「最近地域行事で活動しています。今までしよった方が高齢でできなくなったので、代替わりみたいな感じで」

山﨑翔太さん:
「(若者が)少人数でも変わっていけるところは変わっていける。盛り上げることができるかと言うと難しいが維持していくことは少しずつでもできるかな」

運動会には創哉さんの妹で幼稚園児の雫さんも参加する。
家でも食事をしながら運動会の話題で盛り上がる。

梅木創哉さんの妹・雫さん:
「とりあえずおもしろがってもらえたらグー!」

梅木創哉さん:
「小学校最後の運動会なので、勝ったとしても負けたとしても、自分が成長できたってことで楽しんでいきたい」

創哉さんの父・健一さん:
「ほかの地域と比べてずば抜けて河辺が良い場所だとは思わないけど、何かあれば助けてもらえるのは、やっぱり住んでいて人間味を感じるという意味で良い場所」

「自分が成長できたってことで楽しんでいきたい」
「自分が成長できたってことで楽しんでいきたい」

地域から約100人もの人たちが集った

運動会は、赤組の創哉さんと白組の姫華さんによるかけっこで、幕を開けた。
あいにくの雨により、体育館での開催となりましたが、創哉さんら3人の子供のため地域から約100人もの人たちが集った。

こちらは「車輪転がし」。棒で車輪を押し進めるシンプルな競技ですが、実際にやってみるとなかなか難しいようで…。

創哉さんの姉・菜々子さん:
「むずいむずい!これむずい!」

なかなか難しいようです
なかなか難しいようです

勝負はアンカーの創哉さんと姫華さんの一騎打ち

そして最後の競技紅白リレーは白熱の展開に。両チーム一歩も譲らず、勝負はアンカーの創哉さんと姫華さんの一騎打ち。結果は創哉の上半身が、姫華さんよりわずかに先にゴールイン!接戦を制し、赤組に勝利をもたらした。

松本姫華さん:
「くやしい」

梅木創哉さん:
「やっぱり最後は勝ちたかったので、思いっきりいったら突っ込んじゃいました」

梅木創哉さんの妹・雫さん:
「楽しかったです。(来年は)初めての競技を色々やってみたいです」

創哉の上半身が、姫華さんよりわずかに先にゴールイン!
創哉の上半身が、姫華さんよりわずかに先にゴールイン!

みんなが地域で盛り上がって良いですわ

地域の参加者:
「毎年参加してますよ。みんなが地域で盛り上がって良いですわ」

地域の参加者:
「体育館で運動会するの初めて。立派にできて良かったです」

梅木創哉さんの父・健一さん:
「まずは何とか子供たちを呼べるような形で頑張っていきたい。(来年以降の児童は)2人になるが変わらず運動会は続けていきたい」

山﨑翔太さん:
「こういう活気のあるイベントがあったら、地域的にも盛り上がると思いながら参加しました。帰ってこられるふるさと作りではないが、みんなが帰ってこられるような場所を作っていきたい」

過疎が進む河辺地区で「最後の希望」とも言える河辺小学校。子供たちの声を残すため、地域総ぐるみの取り組みは続く。

過疎が進む河辺地区で「最後の希望」
過疎が進む河辺地区で「最後の希望」
テレビ愛媛
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