8月の線状降水帯による記録的大雨から間もなく2カ月です。熊本県は今回の大雨による農業被害額がおよそ861億円に上るとしています。被害が大きかった宇城市で特産のショウガを生産している農家を取材しました。

宇城市小川町の海東地区です。8月10日から11日にかけての記録的大雨で土砂崩れや、斜面の崩落が複数カ所で発生。未だ水道が復旧していない世帯もあり、集落内の至るところに災害の爪痕が残されています。

JA熊本うきでは91軒の農家がショウガを栽培していて、そのほとんどがここ海東地区です。生産量は八代市東陽町と並んで県内トップクラスですが、今回の大雨ですべての農家が被災しました。

【ショウガ生産者前橋一孝さん】
(前橋さん)「この圃場はここ1枚あったが大雨で山から森が落ちてきたような感じ」(寺田アナ)「森が落ちてきた?」(前橋さん)「そのまま畑の中に木が生えたような状態で全部土砂で埋まってしまっている」

この地で祖父の代からショウガを栽培する前橋一孝さんです。先月の大雨で近くの山が崩れ、大量の土砂と木々がショウガ畑に流れ込みました。

【ショウガ生産者前橋一孝さん】
(寺田アナ)「木は切っているが、これは前橋さんがされたんですか?」
(前橋さん)「そうです。そのまま置いておいても影ができたりショウガの茎を折ったりしてしまったので撤去した」(寺田アナ)「ここにもショウガが植わっている?」(前橋さん)「埋まっている。現状、埋まっているところは腐っている。腐ったところからそのショウガを媒介して病気が発生してしまう状況。その影響でこれから3年間くらいは次のショウガの植え付けができない状態が続くのではないか…」

前橋さんによるとショウガは繊細な作物。土の中に含まれる細菌からの病気を防ぐために土壌消毒などきめ細かな管理が欠かせません。しかし、今回の大雨で大量の土砂が流れ込み、土壌の菌の密度が増えたことで病気が蔓延してしまっているといいます。

今月末から収穫が始まり春先まで貯蔵した後、出荷しますが、いったいどれくらいの量のショウガを無事に出荷できるのか、被害の全容はまだ見えません。経験のない事態に、先の見えない不安を抱えています。

【ショウガ生産者前橋一孝さん】
(これからどうやって畑を再生させる?)「再生…まだ全然想像もできない。
(土砂や倒木の撤去など)行政とタイアップしないとできない部分が強い」
「農業って結局、自然と共存。毎年毎年気候変動が激しい時代なのでそれに付き合う。向き合いながらできることをやるしかないんじゃないかな…」

今は、生き残ったショウガを無事に出荷し、次のシーズンに向けての土づくりに専念する。前橋さんはただひたすらに復旧に向けて歩んでいます。

テレビ熊本
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