10月5日、岐阜県にある世界遺産・白川郷で、男性観光客が背後からクマに襲われ軽傷を負いました。インバウンドなど訪れる人が絶えない場所でのクマ被害に全国の観光地にもショックが広がっています。

県内も例外ではありません。今年は木の実の不作で県内は出没が増加すると言われています。警戒感を強める県内の観光地を取材しました。
    
10月に入り、クマの目撃や痕跡の情報がすでに12件にのぼる勝山市。幸いにも人的被害は報告されていませんが、相次ぐ出没に水上実喜夫市長は警戒感を強めています。

水上市長:
「秋の山は悩ましいところ。SNSを通じて市民へ呼びかけて、それが観光客にも伝わるような方法を取りたい」
 
市としても、情報発信を強化し観光地のクマ対策に力を入れる考えです。

市内の観光地の一つ越前大仏。
 
田島嘉晃アナウンサー:
「勝山市の越前大仏です。こちらすぐ後ろに山が迫っています。クマの出没が心配されていて安全対策が進んでいます」
 
周辺の豊かな自然が魅力でもある越前大仏。現時点でクマは出没していませんが、訪れた人が山に近い日本庭園に入る際は十分に注意するよう声掛けをしています。

<受付の女性の声かけ>
「勝山にはクマさんがあちらこちらに出てまして、ここでは出てないですよ。でも勝山市では出ているので、日本庭園に行くときには大きな声で歌をうたって・・・」
 
<訪れた客>
「分かりました。陽気に行きます」
 
スタッフによると、寺を訪れるのは県外客やインバウンド客が多く、大半が勝山市内にクマが出没していることを知らないといいます。
 
越前大仏がある大師山清大寺では、敷地内に草むらができないようこまめに草刈りをしたり、離れた場所にある五重塔の閉館時間を早めるなど、例年以上にクマへの警戒を強めています。

清大寺の職員は「今までは出ていなかったけど、(出没が)増えているとなると拝観に来た人に被害があったりすると怖い。できることは少ないかもしれないが、声掛けや注意喚起はしていきたい」と話しています。

一方、池田町にあるアドベンチャーパークの「ツリーピクニックアドベンチャーいけだ」では、クマなどの獣を寄せ付けないために敷地内で爆竹を鳴らしています。
  
目玉アトラクション、ワイヤーで吊り下がり山の間を滑り降りる「メガジップライン」は10月から夜の営業がスタートしましたが、クマ対策として、施設の営業開始前の朝と、ナイトメガジップが始まる前の夕方の1日2回、メガジップラインの周辺で爆竹を鳴らしています。
 
対策は他にもー

「トウガラシ成分の入った哺乳類用の線香があるので、それを炊きながらアテンドしたりしている」(スタッフ)

さらに、スタッフは緊急時用としてクマを撃退するスプレーも携帯し、観光地での被害が発生する中、対策を強化して秋の営業に臨んでいます。

福井県自然環境課・國永知裕さんは「秋の出没については現在83件で、まだ大量出没という段階にはなっていない」と話します。
  
ただ、今年はブナやミズナラといったクマが食べるドングリ類が不作のため、今後、冬眠に備えエサを求めて山を下りるクマが増え、大量出没となる恐れは高いとみています。
  
「一部地域では出没数が少しずつ増え始めている状況もある。この後、10月中旬以降からクマ出没は増加していくのではないか」(國永さん)
  
大量出没が懸念される今後は秋の行楽シーズンの真っ只中。
 
観光地での対策について國永さんは「クマはエサがないと活動が活発になって人里に下りてくることもあるが、引き寄せないことが重要。また利用客のごみの管理も重要になる。クマが破壊できないようなごみステーションを設置するとか、潜み場になるような藪や草むらを刈り払い、見通しをよくすることなどが非常に重要」とします。
  
また、観光客側は、クマの出没情報を積極的に仕入れることも大事だと話します。
   
そんな中、県は10月15日から防災アプリ「Yahoo!防災速報」でクマの出没情報のプッシュ通知を始めます。
 
國永さん:
「ヤフー防災アプリを持っている人に対してプッシュ型の通知で“この集落でクマが出ました”という情報が、比較的速やかにスマホに通知される仕組みです」
 
今年と同じようにドングリなど木の実が不作だった2003年の出没件数の推移をみると10月、11月が突出して多くなっています。これと同じ傾向だとすると、今年のピークはこれからと予想されます。
  
里山だけでなく、市街地、そして観光地など、どこであっても出没の危険があるクマ。人への被害が出ないよう、観光地も客も積極的に情報を取りながら油断せずに過ごす必要がありそうです。

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。