ノーベル化学賞の受賞決定から一夜が明け、京都大学の北川進特別教授(74)がキャンパスに出勤。

多くの大学関係者や学生らが拍手で出迎えた後、花束を贈られました。

その後の会見で北川さんは、自らを“ただのおじさん”と称し、受賞決定の感想を「こんなこと言っていいのか分かりませんが、ノーベル賞をもらうっていうかそういう発表されるとですね、今までただのおじさんがですね、急に変わるんですよね、取り扱いが。プライベートもなくなるぐらい。これはよろしくないなと思ったんですよ。いつも祈ってることは、自分の人生平穏で生きられますようにと、平穏だからこそいろんなアイデアが浮かんで、私は化学ですけど、化学ができるんだなと。ことしも平穏にと思ってたんですけども、いい意味で平穏でなくなったんでどうしようかという気は確かにあります」と述べました。

それでも受賞が決まった翌朝は穏やかに迎えられたようです。

京都大学高等研究院・北川進特別教授:
きのうは夜遅く帰ったんで、なんとか睡眠をしっかりとろうというので、バタンキューで、気持ちよく朝起きたので普段と変わらず。

北川さんが開発したのは、ナノサイズで非常に小さく規則的な穴を持つ、多孔性金属錯体。

二酸化炭素や水素など、狙った物質を吸着・貯蔵できる極めて特殊な素材です。

日本科学未来館科学コミュニケーター・加藤昂英さん:
例えば、環境中に出てしまうような有害な物質。これを吸着することで、取り除いたりだとか、いろんな物質と分離するような技術だったりとか、これからどんどん社会に出て行く可能性がある。

この技術で有害物質の除去や二酸化炭素の回収、砂漠の空気からの水分採取などのほか、水素の貯蔵などエネルギー分野での応用も期待されています。

ノーベル化学賞の選出が発表されたのは、日本時間の8日午後6時45分。

発表を受けて北川さんは8日夜、京都大学の会見場に駆け付け、連絡を受けた瞬間を「高等研究院の私の居室で、たまっていた仕事を片付けておりました。そのときに私の横の固定電話に電話かかってきました。5時半ですかね。最近勧誘の変な電話がかかってくるんですよ。私はまたかと思って、ちょっと不機嫌にとったら、スウェディッシュアカデミーの選考委員会の委員長と名乗られたので、ちょっとびっくりしました。よくそういうのがかかってきたとき、やっぱり非常に大きな賞だし名誉あるものだから、本当かな?と思ってしまいます。フェイクじゃないんだろうかと」と振り返りました。

会見の途中には、阿部文部科学相から祝福の電話がありました。

電話が切れてしまう思わぬハプニングもあった中で、北川さんは次世代の研究者への支援を大臣に要望しました。

阿部俊子文科相:
本当に先生、おめでとうございます。

京都大学高等研究院・北川進特別教授:
ありがとうございます。基礎研究を重視する。基礎研究というのは息の長い研究。それを大きくやるような施策をお願いしたい。まず第一に、若い人の研究時間を確保するような施策が必要だと思う。

そして9日、改めて臨んだ会見では、若い世代の研究者に「『無用の用』。今役に立つと思われていないけれども、違う視点でやればそちら側が非常に大きくなるということもあり得る。すでに皆さんがいっぱいやったからもうやることはないと諦め気分にならずに、ますますチャレンジ精神でやっていただきたいというのが私が若い人にいつも希望することです」とアドバイスしました。

ノーベル賞の授賞式は、12月にスウェーデンのストックホルムで行われます。

関西テレビ
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