2015年に鹿児島銀行と熊本の肥後銀行が経営統合した九州フィナンシャルグループ(九州FG)が、2025年10月で設立から10年を迎えた。10月7日に開かれた会見でグループの会長を務める鹿児島銀行・郡山明久頭取は、台湾の半導体企業、TSMCの熊本進出による効果を「今後、しっかり取り込んでいきたい」と話した。
「TSMCに対応してきた肥後銀行の知見は必要」
九州FG・郡山明久会長(鹿児島銀行頭取):
TSMCという大きなインパクトが出てきたときにそれにつながるサプライチェーンがこれから出来上がる。肥後銀行でこれまで対応してきた知見は、周辺に波及するには必要。特に南九州中心に経済効果を取り込んでいきたい

設立10年 熊本地震で深まる絆 人材交流活発に
九州FGは2015年、鹿児島銀行と熊本・肥後銀行が経営統合して設立され2025年10月1日で10年を迎えた。
設立翌年の2016年には熊本地震が発生。10月7日の記者会見で、グループ社長の肥後銀行・笠原慶久頭取は、この10年の印象的なケースとして、熊本地震の際、鹿児島銀行から肥後銀行に対し行われた物資や人員の支援を挙げ、「私たちだけでは対応が難しかった。これで両行の絆が深まった」と振り返った。
両行行員の人材交流は、出向や研修など、10年間で約1700人にのぼる。
グループ会長で鹿児島銀行・郡山明久頭取は、当時、県境をまたいだ第一地銀同士の経営統合は珍しかった点に触れ「10年前の経営統合は、今を先取りしている。このアドバンテージを生かして地域を守りながら進化したい」と今後を見据えた。

独自性生かし鹿児島、熊本に根ざした事業展開を
両行単体の2025年3月期の当期純利益はそれぞれ過去最高益。グループの株価も2025年、最高値を更新し、10年を締めくくっている。課題となっているシステム統合についても2030年をめどに検討が進められている。
会見で笠原社長は「地域の皆さんが積極的に投資して人口減少も可能な限り食い止める。経済の縮小を食い止める。銀行部門でも収益減少も食い止めることができると信じている」と述べた。
将来的に人口の減少が見込まれる中、グループでは、両行の独自性を生かしながら、それぞれの地域に根ざした事業展開を目指している。
