福島県いわき市中之作地区に2025年、地区内唯一の宿泊施設「enoto(えのと)」がオープンした。オーナーの谷口太郎さんは、経済産業省で福島復興支援に携わっていた元官僚。行政マンから一転、地域に根ざした経営者への道を選んだ理由とは。古民家をリノベーションした心地よい空間で、地域と訪れる人をつなぐハブを目指す谷口さんの新たな挑戦を追った。

官僚から経営者へ

地域の「緑」をつなぎ、地域の「扉」となる拠点へ。2025年7月に福島県いわき市中之作地区にオープンしたのは、地区内で唯一宿泊可能なゲストハウス「enoto(えのと)」だ。
初めて経営に挑戦する谷口太郎さん。3カ月ほど前までは、経済産業省に勤め福島の復興や中小企業の支援に携わっていた。

古い民家を改装 泊まれる海の交流館enoto(福島県いわき市中之作)
古い民家を改装 泊まれる海の交流館enoto(福島県いわき市中之作)
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東京都出身の谷口さん。東京大学を卒業し2018年に経済産業省に入省。官僚として双葉郡の帰還困難区域の解除に向けた調整などの仕事をしてきた。
官僚を辞めるきっかけは、福島へ移住した大学時代の友人がいたことや、福島を離れた後も定期的に福島のツアーを企画していたこと。そのタイミングでリノベーションした古民家の管理人を募集していたことなど偶然の縁が重なったことが後押したという。

経済産業省時代の谷口さん
経済産業省時代の谷口さん

「地域で経営にチャレンジをするとことを、キャリアとして考えていた時期でもあったので、一回飛び込んでみて、何かチャレンジしてみようかと思うようになった」と谷口さん語る。

試行錯誤の日々

これまでとは全く異なる仕事。試行錯誤しながら、退職から1カ月ほどで準備を進めた。
「初めての事ばっかりで、最初は戸惑いながらだった。いざやってみると、例えば家具の色とか、寝具の色とかも、自分でこの色が良いとか判断する軸が全然無かった」と振り返る。

宿泊客を迎える準備
宿泊客を迎える準備

ゲストハウスの宿泊部屋は3室。(※1泊6000円・税込) 宿泊者以外も立ち寄ることができるフリースペースも用意され、月に数回住民がイベントや会議などで利用している。
現在は知り合いを中心に、週末1組ずつ宿泊客が入っていて、この日は官僚時代の後輩が宿泊した。

宿泊に来た後輩たちと
宿泊に来た後輩たちと

後輩たちに谷口さんについて話しを聞くと「地域に貢献して、その地域から日本盛り上げていくみたいな。そういう考え方も聞いて、すごく谷口さんに合っていると思う」「すごく福島に熱い思いを持ってらっしゃる。地域に対してもすごく熱い思いを持ってらっしゃるっていうイメージだった」という。

地域とファンをつなぐ

翌朝、谷口さんはゲストと中之作港に行き地域の歴史を伝えた。中之作や浜通りの魅力を伝えるツアーも企画している。
「色々な風景・歴史・人が紡いできた文化などを面白がる人が、色んな地域からファンが増えていくみたいなところを、『ハブ(集約点)』というか、『拠点』に自分がお手伝いできていければ良いのかなと思っています」と谷口さんはいう。

宿泊客に地域のことを紹介する谷口さん
宿泊客に地域のことを紹介する谷口さん

地域の人も、この地域を知らない人も。みんなが集える場所を目指して、ゲストハウス「enoto」には心地よい潮風と共に緩やかな時間が流れはじめている。

(福島テレビ)

福島テレビ
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