1155人中わずか6人。合格率0.5%──日本で最も難しい試験とも言われる「剣道八段審査」で、秋田県警の警察官・原田智徳さん(48)が合格を果たした。日々の職務を全うしながら鍛錬を積み、後進の育成にも力を注ぐ原田さんの歩みには、剣の道を貫く覚悟と静かな情熱が宿っている。

「剣道八段」2度目の挑戦でつかんだ栄光

2025年11月、東京で行われた剣道八段審査会。七段取得から10年以上の鍛錬が必要とされ、40代での合格は全国でも珍しい狭き門だ。

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原田さんは2度目の挑戦でその壁を突破した。

初挑戦の際は会場の雰囲気にのまれ、集中しきれなかったという原田さん。しかし今回は、審査前に教わったことを整理しつつも、いざ始まったら“無心”で臨むことを心がけた。

剣道八段審査会の結果発表の様子
剣道八段審査会の結果発表の様子

「番号が掲示された瞬間、自分の番号かどうか自信が持てなかった。本当に自分なのか、不思議な気持ちだった」と、原田さんは悲願達成の瞬間を語った。

警察官としての使命と剣道がもたらす力

原田さんの本業は、秋田県警察本部交通企画課の警察官。2001年に憧れだった父の背中を追って警察官となり、機動隊勤務や東日本大震災の支援、地域・交通部門など多岐にわたる現場を経験してきた。

同僚たちは口を揃えて原田さん(右)の「人柄の良さ」を語る
同僚たちは口を揃えて原田さん(右)の「人柄の良さ」を語る

同僚たちは原田さんについて、「非常に優しい。何事にも一生懸命で見習うべきところが多い」「物腰が柔らかく、剣道で培った精神力と忍耐力を仕事でも発揮している」と、口を揃えて“人柄の良さ”を語る。

原田さん自身も、剣道が仕事に生きていると感じている。

原田智徳さん:
「剣道は人とのやりとり。県民の皆さんの気持ちに寄り添って仕事に臨めていると思う」

子供たちに伝える「続ける力」

勤務後、原田さんは秋田市の県立武道館で開かれる県剣道連盟の稽古会へ向かう。

子供たちに稽古をつける原田さん(右)
子供たちに稽古をつける原田さん(右)

週に1度、子供たちと汗を流し、技だけでなく剣道に臨む姿勢や心構えを伝えている。

「子供たちが活発に動き、成長し、続けてくれることが一番。剣道人口が増えていけばうれしい」と原田さんは話す。

子供たちの指導に余念がない原田さん
子供たちの指導に余念がない原田さん

指導を受ける子供たちも、八段の技と姿勢に大きな刺激を受けている。

小学6年生の児童は「めったに練習できない先生で、とても光栄。自分も原田さんのようにみんなに憧れられる存在になりたい」と目を輝かせる。

八段はゴールではなく新たなスタート

原田さんは“八段”を「剣道界からのプレゼント」と表現する。しかし、その言葉に慢心はない。

「剣道界の発展に貢献したい。まだまだ剣道人生は終わらない。体が動かなくなるまで続けるつもり。ゴールはない、見えない」と語る原田さん。

合格は終着点ではなく、さらなる精進への通過点。原田さんはきょうも竹刀を握り、静かに、そして力強く剣の道を歩み続けている。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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