交通事故や病気が原因で脳に損傷を負う「高次脳機能障害」は、「見えない障害」と言われている。生活に不可欠な車の運転再開を後押しするため、宮崎県作業療法士会と宮崎県指定自動車学校協会が連携協定を締結した。7年の歳月をかけ、新たな支援の仕組みが動き出す。
7年の歳月を経て連携協定を締結

事故や病気で脳に損傷を受け、認知機能などが低下する高次脳機能障害。命が助かり退院した後も、注意障害や記憶障害といった様々な障害と向き合うことになる。

こうした高次脳機能障害のある人が再び車を運転できるよう後押しするため、県作業療法士会と県指定自動車学校協会が連携協定を結んだ。この仕組み作りには7年の月日を要したという。

締結式には、作業療法士や自動車学校の技能検定員など約30人が臨み、県作業療法士会の津輪元修一会長と、県指定自動車学校協会の中村壽秀会長が協定書を交わした。
県内11校で統一した「実車評価」が可能に

この協定は、高次脳機能障害の人の運転再開を支援する際に、机上の検査だけでなく、運転技能の評価もできないか、という声が上がったことをきっかけに実現した。

これまでは特定の自動車学校で個別に対応してきたが、協定によって県内の11の自動車学校で統一した「実車評価」が可能になり、その結果は医師が診断書を作成する際の判断材料としても活用できる。

県作業療法士会 岩切良太副会長:
高次脳機能障害のある方や、その家族が困ったときに頼りにしてもらい、利用してもらえるシステムになっていると良い。さらに利用者が増えるといいなと思っている。
技能検定員と作業療法士が研修
10月3日には「実車評価」の研修も行われた。

高次脳機能障害のある人は、左側通行の環境下で左側の空間や人、物を認識しにくい傾向がある。

研修では作業療法士と技能検定員が、どのような点に注意しながら運転を評価すれば良いかを学んだ。

高次脳機能障害者の実車評価を4回実施 技能検定員:
元々運転をされていた方なので、その方の癖や運転能力を、一番初めの慣らし走行の時に入手して、それをベースにして、できる・できないを判断するところが、一番難しいのかなと感じました。
支援の窓口となる人材育成へ
県作業療法士会によると、必要な研修を修了し、実車評価に立ち会える作業療法士は現在58人いる。

同会では今後、運転再開を支援する際の窓口となる作業療法士をさらに増やしていきたいとしている。
(テレビ宮崎)