昭和の温もりを伝える小さな駄菓子屋。鹿児島県指宿市湊にある「ひごP」には、子どもたちの笑い声が絶えない。店内に並ぶ150種類以上の駄菓子は、大人には懐かしく、子どもたちには新鮮な驚きをもたらしている。

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地元のガス会社が始めた駄菓子屋の意外な人気

「うちはガス会社なんですけど、常に人がいる状態なので、ちょっとしたお菓子とかなら販売できるから、駄菓子やってみようかって本当に軽い気持ちで始めました。反響ぶりに正直驚いてます」と、店主で地元のガス会社「肥後プロパン商会」の肥後大輔さんは予想を超える人気に驚いている。

2025年3月、「肥後プロパン商会」のショールームの一角にオープンした駄菓子屋「ひごP」。

昭和レトロを意識した木の温もりあふれる店内には、カラフルな駄菓子が所狭しと並ぶ。ガス会社らしい遊び心で、商品棚にはガス管が使われているというこだわりも。
リクエスト用紙も用意され、「この駄菓子が欲しい」という子どもたちの声に耳を傾ける姿勢が、地域に愛される理由の一つだろう。

店内にはカラフルな駄菓子がいっぱい
店内にはカラフルな駄菓子がいっぱい

小学2年生の「子ども店長」が接客の腕を磨く

店番を務めるのは肥後さんの母、明美さん。そして特筆すべきは、肥後さんの小学2年生の娘・旭桧ちゃんが「子ども店長」として活躍していることだ。商品の整理や補充、売れ筋のチェックなど重要な仕事を任されている。

「計算が自分でできるようになったらいいかなって思って」と話す旭桧ちゃん。お金の計算や接客を通じて、学校では学べない貴重な経験を積んでいる。

子ども店長として計算や接客を務める旭桧ちゃん
子ども店長として計算や接客を務める旭桧ちゃん

子ども店長、旭桧ちゃんお勧めの駄菓子を聞くと「わたがし。はじけるキャンディ『パチパチパニック』をかけて一緒に食べる。あとはサッカースクラッチ。中にラムネが1個だけ入っていて、一緒に入っているスクラッチを削って日本が勝てばお菓子と交換できる」とのこと。子どもならではの斬新な組み合わせが、来店する子どもたちの間で人気になっている。

「わたがし+パチパチパニック」と「サッカースクラッチ」が人気
「わたがし+パチパチパニック」と「サッカースクラッチ」が人気

地域の子どもたちの居場所づくりへの思い

駄菓子屋さんをオープンさせたのは、旭桧ちゃんがきっかけだったという肥後さんは話す。

「娘(旭桧ちゃん)が友達とお小遣いでお菓子を買いに行くときにスーパーしかなかった。自分が子どものときは駄菓子屋さんがたくさんあって友達と一緒に行った記憶が(ある)。この辺りは最近、子どもの声が全然聞こえてこないエリアだったので」と話す肥後さんは、“地域の子どもたちが気軽に集まれる場所を作りたい”、そんな気持ちでこの駄菓子屋を始めた。

子どもたちの口コミで評判は広がり、今では“常連さん”も増えてきた。店の前で買ったばかりの駄菓子を開け、友達と分け合う姿はどこか懐かしく、まさに昭和の風景そのものだ。

どこか懐かしい光景
どこか懐かしい光景

未来へつなぐ地域の絆

「理想は、いま小学校の高学年の子たちとか、普通に喋るような常連の子たちが大人になった時に地元に残ってくれるとか、そういうきっかけの一つになればいいなと思ってます」

子どもたちの笑顔と活気に満ちた「ひごP」。

子どもたちの憩いの場が地域のつながりを育みますように。ガス会社が作った小さな駄菓子屋は、夏休みを謳歌する子どもたちの心に昭和の温もりを灯している。

ひごPが地域のつながりを育む場になればと話す肥後さん
ひごPが地域のつながりを育む場になればと話す肥後さん
鹿児島テレビ
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