トランプ政権も本腰の薬物問題 背景には貧困
フェンタニルなどの合成麻薬はメキシコの麻薬カルテル「シナロア・カルテル」などが供給ネットワークの中心とされ、これらのカルテルは中国の化学メーカーからフェンタニルの原材料の供給を受けているとされる。
米麻薬取締局は、ニタゼンが中国を拠点とする業者によって販売されていることから、メキシコの麻薬カルテルが中国との既存のネットワークを利用してアメリカにニタゼンを流入させる可能性を指摘。トランプ政権は、麻薬を積んだベネズエラの船を空爆するなど対策を強化している。

取り締まりが強化される一方で、シュナイダー准教授は、「貧困と低迷する経済が薬物問題の大きな要因だ」とし、貧困対策や公衆衛生などへの投資が重要だと訴える。
ウェストバージニア州やケンタッキー州などのアパラチア山脈地域は、合成麻薬の蔓延がとても深刻な貧困地域としても知られる。
その理由について准教授は「長時間の肉体労働による身体的苦痛のほか、精神疾患やトラウマなど精神的苦痛を和らげるために薬物を利用している」と指摘する。多くの薬物乱用者は子どもの頃に有害な経験をしているとされている。

アメリカでは、ニタゼンやフェンタニルが含まれる錠剤は路上でたった1ドル(約147円)やそれ以下で購入でき、准教授は「乱用者が貧困層であることから、価格が手頃に設定されている」と話す。

人を破壊する薬物問題の解決には、薬物そのものの規制に加え、世代を超えて続く貧困や、子どもを取り巻く環境など、社会の根本的な問題にも取り組む必要がある。