全国のスーパー約1000店で販売されたコメ5kgあたりの直近の平均価格は4246円と、前の年の同じ時期と比べ1000円以上も高くなっています。長引く令和の米騒動は酒造りにも暗い影を落としています。
9月14日。
JR清水駅前で開かれた地酒ストリート。
全国の蔵元が集結し、静岡が誇る自慢の地酒から海外でも愛される全国の銘酒までずらりと並びました。
来場者:
おいしい。飲みやすい
来場者:
すっきりと飲みやすくて、いくらでも飲めそうな感じ
来場者:
辛口、大好き
ただ、蔵元の表情は晴れません。
青島酒造(喜久酔)・青島孝 社長:
(酒米の)値段は飯米以上に上がっている。固定費が随分上がってしまうので経営的には厳しい
大信州酒造(大信州)・中村築さん:
(酒米の)価格は上がっている。去年に比べて相当上がっている状態
三和酒造(臥龍梅)・鈴木孝昌 専務:
酒米農家が減ってしまい、酒米にも影響がある。値段を上げざるを得ないところもあるが、お客さんにリーズナブルな価格で提供したい思いもあり、ギリギリの戦い
聞こえてきたのは日本酒の原料である酒米の高騰に喘ぐ声です。
静岡県静岡市清水区由比で113年続く神沢川酒造場。
現在酒造りはオフシーズンですが、仕込みに向けてこれから仕入れる酒米の価格上昇は深刻な状況になっています。
神沢川酒造場(正雪)・望月正隆 社長:
去年に比べて70%くらい(上がる)と思っていたが、100%以上上がっているものもある。最終的に3月くらいまでの間の酒米価格を見て、もう一度(商品の)価格を変更せざるを得ないくらいの上り幅
神沢川酒造が使用している酒米の1つが県内産の令和誉富士。
2024年の仕入れ価格は60kgあたり1万7000円ほどと、前の年と比べて約20%値上がりしましたが、2025年はさらに高騰して3万円を超える見通しで、商品への価格転嫁が避けられない状況です。
神沢川酒造場(正雪)・望月正隆 社長:
値上げ幅もかなり大きくなるが、そうなった時に市場の感覚と商品の価格がマッチするのか危惧している
さらに追い打ちをかけているのが酒米の作付面積の減少です。
JA全農によると、2024年に収穫された県内産のコメの60kgあたりの価格は、食用米のコシヒカリが日本酒の原料となる誉富士を大きく上回りました。
このため、酒米の栽培から収益性の高い食用米へと転作する農家も増えていて、県内における酒米の作付面積は2024年から2025年にかけて15%ほど減少しています。
焼津市で酒米を育てている八木栄幸さん。
県内の酒造に協力したいとの思いから栽培を続けていますが、昨今の市況を見て本音がこぼれます。
八木青空農場・八木栄幸さん:
酒米はやりづらい、価格が安いとなると、減らして普通のコメを作った方が経営的には有利。(酒米の)価格からみると“やめたい”というのは正直あった
八木さんによれば、60kgあたりの価格を比較したときに2024年は食用米と酒米とで最大5000円の開きがあり、出荷量が増えればその分だけ収入に影響が…
このため、価格が急激に変動しないような流通システムの構築を望んでいます。
八木青空農場・八木栄幸さん:
余れば安くなる、足りなければ高くなるということはコメの世界ではあってほしくない。苦しい思いをするためにコメを作りたくないので、バランスよく酒米にも飼料用米にも十分コメが行く状況を作ってほしい
酒米が危機に瀕する中、全国では酒造業に補助金を出す自治体も増えていて、県内でも酒造組合が県に支援を要望しました。
これを受け、県議会9月定例会では県内の酒造会社が静岡産の酒米を購入する際の補助金として約1000万円を計上した補正予算案が上程されています。
ただ…
神沢川酒造場(正雪)・望月正隆 社長:
誉富士以外の一般の(もろみ造りに使われる)掛米や加工米も静岡の農家に作ってもらっているので、こういうところも補助してもらえるようになると静岡のメーカーは誉富士だけでお酒を造っているわけではないので本当に助かる。ぜひお願いしていかないといけない
コメの価格が安定しない中で地域の酒造りを守ることができるのか…酒造会社は苦悩はしばらく続きそうです。