能登半島地震で液状化被害に見舞われた富山県射水市港町地区では、対策工事の実証実験が始まったものの、維持管理費の住民負担をめぐる不安が地域コミュニティを揺るがしている。被害の程度に差がある中、地域のつながりを守るために住民たちは全額公費負担を望んでいる。

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液状化被害で15世帯が町を離れる

射水市港町地区は新湊漁港にほど近い場所に位置している。能登半島地震によって、この地区ではおよそ3ヘクタールが液状化した。

古新町西部自治会の佐竹正会長(76)によると、88世帯のうち液状化で家が傾くなどの被害を受け、15世帯が町を離れたという。

「ブルーシートがかかっているところも解体予定」と佐竹会長は語る。「これが公費解体。こっちもね。ここは2棟」

この地域では先月、液状化対策の実証実験に向けた工事が県内で最も早く始まった。射水市が検討しているのは、ポンプで地盤の水を抜き地下水位を低くすることで地盤を強固にする対策だ。この工法は他の工法より工事費用を抑えられる利点があるが、ポンプの電気代などの「維持管理費」を誰がどの程度負担するかが課題となっている。

被害の差が地域を分断する恐れ

佐竹会長によれば、液状化の被害は海に近い北側で大きく、市もこのエリアでの対策工事を検討している。一方、同じ自治会に含まれる南側の被害は比較的軽微だったという。

「顕著な被害を受けたのはこの通りから北側。あっちが南側で電柱もあまり傾いていない。でも同じ町内」と佐竹会長は状況を説明する。

北側と南側の世帯数は半々だ。もし市が住民負担を求め、自治会での議論になれば、話がまとまらないのは明らかだと佐竹会長は懸念を示す。

「金銭の問題。住民間でいがみ合いが出てくればコミュニティが崩壊する。自治会が崩壊する」

地域のつながりを守るために

高齢化に加え、液状化で町から人が離れる中、地域のつながりを守るために佐竹会長たちが望むのは、維持管理費の全額公費負担だ。

「地区の人たちの負担はなしで土壌を直していくのが当然だと思う」と佐竹会長は主張する。「歴史のある街だからなくしたくない。私たちも市に意見を具申していく(伝えていく)」

射水市は今年12月から半年間液状化の対策工法の実証実験を実施し、効果を確認することにしているが、地域住民の費用負担をめぐる合意が得られるかどうかが大きな課題となっている。

市は維持管理費の住民負担について「検討中」としており、この不透明な状況が地域コミュニティの存続に影響を与える可能性がある。地域住民の声に市がどう応えていくのか、今後の対応が注目される。

富山テレビ
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