福島県福島市の吾妻連峰の一角に建設された大規模太陽光発電所が2025年9月30日から商業運転を開始。しかし、景観悪化や光害の問題が解決されないまま運転開始を迎え、地元住民からは不満の声が上がっている。
景観悪化や光害などの課題
福島市の吾妻連峰の一角に建設された「先達山太陽光発電所」。9月30日から東北電力ネットワークへの売電を行う「商業運転」が始まった。
約60ヘクタールの敷地に9万6000枚ほどの太陽光パネルを並べ、年間1万6000世帯分の電気を生み出すこのメガソーラー。
2022年から工事が始まり、次第に景観の悪化が指摘されるようになった。商業運転開始の日を迎えても、緑化は予定通り進んでいないという。

そして、パネルの設置が進むにつれ問題視されはじめたのが太陽光の反射による「光害(ひかりがい)」。
福島県や福島市にも「反射光がまぶしくて危うく交通事故を起こすところだった」「事故が起こる前にパネルの角度を変えるなど何かしら対応したほうがよい」といった苦情が寄せられるようになった。
解決せぬまま迎えた運転開始
福島市は、発電所の管理運営を行うAmp社に景観の改善と反射光の検証を行うよう繰り返し求めているが、パネルの反射の検証については「受託する会社が決まらない。断られている状況」、景観の改善については「環境影響評価時のフォトモンタージュに近付けるよう努力を続けていく」として現在まで具体的な対応はとられていない。
先達山太陽光発電所の事業に疑問を投げかけてきた市民団体「先達山を注視する会」は、これまで3回にわたってAmp社の担当者を福島市に招き意見をぶつけてきたが、7月以降は直接の連絡が途絶えた。

指摘する課題が手つかずのまま迎えた商業運転開始。
「先達山を注視する会」は会見を開き、梅宮毅共同代表は「住民の人たちが何も知らないまま今日を迎えているというところが、非常に異質な、異様な雰囲気、おぞましい雰囲気を醸し出しているなと私たち感じております」と話した。
また松谷基和代表は「素晴らしかった風景が無残になった姿を毎日見せられている。これを見ながら何事もなかったとか、これでくじけて何もなかったことになるほど福島人はヤワじゃない」とAmp社と行政に対し今後も対応を求めていく考えを改めて示した。
誇りだった景観に違和感
露わになった山肌に並ぶ太陽光パネルに、拭い切れない違和感を抱え続ける人もいる。
福島市町庭坂に設置された吾妻連峰を見渡せる展望ベンチは、地元の町内会が3年から4年くらい前に設置した。

先達山の麓で暮らす梅津朝雄さんは、町内会のメンバーと一緒に植物を植えたり草を刈ったりしながらベンチを管理している。
「通る人、特にこの地域の人たちにここまで出てきて頂いて、吾妻連峰を眺めながらゆっくりとしてもらいたい。そんな思いで設置しました。吾妻連峰は私たちの誇りです」と梅津さんはいう。
吾妻山のきれいな姿を残したい
子どもの頃から見てきた故郷の景色は、メガソーラーの建設により“一変”した。
梅津さんは「昔から吾妻山を見て育ったものですから、違和感を感じます。あの奥には吾妻山のいいところが見えるのですが、手前のあの景色はやはりない方がいいと思います」と話した。
現在の売電期間が終わるのは15年後の2040年。これからは、メガソーラーがある景色が“日常”になっていく。
「日本の置かれている状況も関係すると思いますので、反対・反対と言いたくないですが、もう少し場所を選んでやってもらいたかった。子どもたちには、吾妻山のきれいな姿をそのまま残していただきたいと思います」と梅津さんは語った。

福島県によると、2024年度の県内の再エネ導入量は、エネルギー需要に比べて59.7%。2023年度より約5ポイント上昇した。2040年度までに100%を目指す福島県の目標に沿うならば、抵抗感を持たれないやり方を模索しなくてならない。