「現在、公園でクマが出ています」(消防)
「クマが出ていますだって」(子ども)
これは9月26日夜、クマに人が襲われた直後の映像だ。
サイレンが鳴り響き、あたりは緊張感に包まれている。
札幌市西区の住宅街にある公園で男性がクマに―
現場は札幌市西区の住宅街にある「平和丘陵公園」。
300メートルほど離れたところには小学校がある場所だが、そこで午後8時ごろ、犬の散歩をしていた40代の男性がクマに襲われたのだ。
「クマに襲われ、右腕をケガしました。血も出ています」(クマに襲われた男性)
襲われた男性は自ら消防に通報した。
男性の目の前に現れたのはトイレの影から現れた親子グマだった。
距離はわずか5メートルほど。
約5秒間、にらみ合いが続いた後、立ち上がった1頭が左前足で男性の顔をめがけて攻撃してきたのだ。

男性は右腕で顔を防御。
その際に腕を負傷した。
親グマの体長は2メートルほど、子グマは1メートルほど。
男性を襲ったのは親グマとみられている。
警察によると、男性は「クマはその後も何回か襲ってきた」「(だから)クマを蹴った気がする」と話していたという。

男性が助けを求める声を聞いた住民は―。
「助けてくださいみたいな男性の声が聞こえた。動物が2頭(斜面を)上がっていくのが見えた」(付近住民)
また、威嚇するような声を聞いたという住民も。
「獣の雄たけびみたいな。なんか威嚇するようなすごいこわい声というか、なんか低い、聞いたことのない声」(付近住民)

ハンター捜索・電気柵設置も駆除には至らず
「ガサガサとそしゃく音がしたら(クマが)上にいるかもしれない。住宅街があることを考えてほしい。バックレストがない方向には撃たない。自分の足をかじられても我慢して」(ハンター)
「ハンターが山に入っていきました。これからクマの捜索が始まります」(中村真也記者)
27日、ハンターや警察官らが調査を開始。
痕跡は見当たらず駆除には至らなかった。
「(きょうの捜索で)明確な痕跡はなかった」(札幌市 環境共生担当課 坂田一人課長)

2021年東区の住宅地にクマが出没して以来の深刻な事態―不安高まる
「あ!いま銃を構えました、あ、いま発砲しました!」(鎌田祐輔記者)
札幌市内では2021年、東区の住宅地にクマが出没。
男女4人が次々と襲われる被害があった。

この時以来となる深刻な事態に近くの小学校でも不安が高まっている。
「怖いなと思う。(学校から)なるべく送迎をするよう言われている。(子どもへ)遠くへ行かないでと言っている」(保護者)
現場付近では9月29日もハンターらが捜索を行ったが、これまでに駆除には至っていない。
公園には林との境界線に約400メートルにわたって電気柵が設置された。

なぜ市街地にクマ出没?謎を読み解くカギはクマの“フン”に
なぜ、クマは人が生活する市街地にまで出没するのだろうか。
その謎を読み解くカギが、現場に残されたクマのフンにあった。
「フンの中身は草が8割。相当、山の中に食べ物がない状況がうかがえる」 (札幌市環境局 坂田一人課長)
餌不足の実態が、周辺の森林で行われた調査でも明らかになってきた。
「今の時期にクマが食べるドングリなど、木の実がほとんど見られなかった。秋は冬眠に備えるために、たくさん食物を食べる時期。それがないと街に下りてくることも増えると思う」(札幌市環境局 清尾崇さん)

「緊急銃猟」の制度スタートも課題が―
全国で相次ぐ街中でのクマの出没。
9月からは法改正により、自治体の判断で発砲が可能となる「緊急銃猟」の制度がスタートした。
9月20日、山形県鶴岡市で初めてその判断がなされた。
体長約1メートルのクマが市中心部の住宅の敷地内に侵入し居座ったため、現場にいた市職員から市役所に連絡。市長が発砲の許可を出し、現場に伝えられた。
その直後、クマが動き出し人に接近したため 「緊急銃猟」の許可は間に合わず、現場にいた警察官の命令で発砲。

従来同様の「警察官職務執行法」に基づいた発砲だった。
現場でクマが発見されてから駆除まで、1時間以上を要した。
その後、鶴岡市の皆川治市長は今回の全国初の判断を踏まえて「ハンターや警察と日ごろから連携している現場の市の職員に、緊急銃猟の判断を委任していくことが必要だと考えている」と述べた。
迅速に対応するため、今後は現場の市職員に権限を委任する方針だということだ。
法律上は市町村長に実施判断の権限があるが、環境省のガイドラインでは緊急的な対応のため委任することを推奨している。

市街地へのクマの出没が相次ぐ中、いざという時に迅速に対応できるのか。
新しい「緊急銃猟」の制度には課題もあるようだ。

なぜ市街地への出没が相次いでいるのか、現場に入っていた札幌市の職員に聞いた。
現場に残されたフンの中身は、草が8割で、相当山の中に食べ物がない状況。今の時期クマが主食として食べるドングリなど、木の実がほとんど森の中で見られなかったため、食べ物を探してクマが人里に歩き回っている可能性が高いと思うと話している。

札幌市内での主なクマの出没情報をまとめた。
26日(金)、札幌市西区の平和丘陵公園で犬の散歩中の男性が襲われた。その約1時間後、公園から西に400mの道路上でまたクマが目撃されたということだ。
そして、同じ個体かはわからないが、西区の山間で9月20日から26日にかけてクマの出没が相次いでいた。
さらに24日から27日、札樽道の高架下の道路などでもクマの目撃も相次いでいる。
9月の札幌市の目撃件数は、2024年が13件、2025年は56件となっている。
まだまだクマの出没が続く時期だ。十分に気をつけてほしい。
