野菜価格が高騰する中、月額料金を支払うことで利用者が自由に野菜を収穫できる「野菜の定額採り放題」のサブスクリプションのサービスを提供する農園が、越前町に新たに開園しました。野菜収穫のサブスクを展開する裏側には、農業を盛り上げたいという強い思いがありました。

高騰する野菜価格

猛暑の影響で、野菜の価格は全国的に高騰しています。農林水産省の調べによりますと、9月25日の東京中央卸売市場での1キロあたりの価格は、ナスが416円(平年390円)、キュウリが488円(平年343円)、トマトが748円(平年559円)となっていて、どの野菜も平年と比べると高くなっています。

農家の負担を減らす「はたけビュッフェ」

「とにかく農家さんが苦しい顔をしないで楽しく働いてほしいなと、もうそこだけなので」
 
こう話すのは、農産物の生産や販売などを手掛ける愛知県の農業法人「ノーティスト」の経営者で現役農家の松本直之さんです。

松本さんは農業の現状を変えたいと、2023年から「はたけビュッフェ」という新しいスタイルの農園を運営しています。「農家の働く時間を減らしたいというのが、はたけビュッフェを始めた大元の目的です」と松本さんは語ります。
 
松本さんが運営する「はたけビュッフェ」は、畑で野菜を収穫し放題のいわゆる“野菜収穫のサブスク”です。全国各地の畑で季節に合わせて旬の野菜を育てていて、利用者は毎月定額の料金を支払うことで、必要な分だけ自由に野菜を収穫できます。
 
毎月定額の料金のシステムなので、生産者は安定した収入を得ることができます。現在、準備中も含め全国11県20農家へ広がっています。
 
「収穫から先を全部利用者に委ねるので、農家としても労働時間は実質半分近くに減る形になっている。月定額にすることで、野菜の高騰、市場動向には左右されにくい点が大きい」と松本さんは説明します。

家族が食べきれる分を会員が自分で収穫

今年7月、この「はたけビュッフェ」が、越前町に新たな農園「チームたいら農園」をオープンしました。オーナーは町内の農家・田中利宏さん(60)です。田中さんはこのサービスが全国で展開されていることを知り、自ら手を挙げました。
 
「野菜の収穫をしてもらえるということで、来てもらい農業の現場を知ってもらえれば理解も深まるのかなと考えている」と田中さんは話します。
 
チームたいら農園では、約300平方メートルの畑で旬の野菜を含め約10種類の野菜を育てています。料金は大人2人世帯で月額9000円。家族が食べきれる分量を目安に会員自身が収穫します。
 
この農園の会員は現在1組で、8月末に初めてトマトやナスなどを収穫しました。現在は春夏野菜の収穫を終え、受け入れを一時休止中。ハクサイやキャベツ、ニンジンなどの秋冬野菜に向け準備を進めています。

農業者の増加や地域活性化にも期待

田中さんは、この「はたけビュッフェ」を通して、地域全体が盛り上がることに期待を寄せています。

「この地域でも農業者の高齢化や担い手不足で、田畑が空いている状態。収穫体験などを通じて農業に興味を持ってもらい、やってみたいという人が出たら、ぜひこの地で農業をしてもらえる仕組みもつくりたい」と語ります。
 
「はたけビュッフェ」を運営する松本さんも今後の展望について次のように話します。「農業を盛り上げ、農家が稼げる仕組みをつくりたいという思いが根幹にある。このサービスを導入すれば労働時間が減り、収入も安定するので、家族を養える農業者を増やしたいという思いが強い」
 
松本さんは「1市町村に1農園」を目指すほか、コメや果物、地域の特産品なども収穫できるなど、農家側がカスタマイズできる仕組みにしていきたいと考えています。

「チームたいら農園」は田中さんを中心に越前町の農家3人で運営。現在、田中さんの畑ともう1人の農家の畑で秋冬野菜を収穫できるよう準備を進めていて、10月20日をめどに新規申し込みの受け付けを再開する予定です。
  
田中さんは「畑での収穫から親戚付き合いのような関係が生まれ、この地域にたくさんの人が来てほしい」と願っています。
 
月額定額で利用者が畑の野菜を自由に収穫できる野菜収穫サブスク。その裏側には、農業全体を盛り上げたいという生産者たちの強い思いがありました。

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。