アニメや映画で活躍する声優を目指して中高生がコンテストにのぞんだ。
たった1人に与えられる全国大会への切符を手にしたのは?
準備はわずか1時間― 声優コンテストに8人が出場
9月13日、札幌で開催された「第3回国際声優コンテスト『声優魂』北海道大会」。
中学生や高校生約50人の中から1次審査を突破した8人が出場した。

「『課題』があるので基本的にしゃべれているか、滑舌や中身の表現ができているか。各審査員によって点数の差が出る」(審査員 百田英生さん)
優勝者には、11月に東京で開かれる全国大会への出場権が与えられる。
8人の中高生が競う、その課題とは?

「今年の第3回は大会当日の初見で練習をしてもらうようにした」(恭敬学園 南賢樹さん)
課題が渡されるのは大会当日。
出場者はホテルの控室で、初めて原稿を目にする。

演技が求められるセリフがある一方、ニュースのようなナレーションや長文の朗読も含まれていた。
気持ちを込めてセリフを練習したり、正しい発音を調べて原稿に書き込んでいく。

準備に使えるのは――わずか1時間。

「すずなさん」と「こゆきさん」は「北海道芸術高校」の3年生。
2人はこの高校の「声優コース」で学んでいる。
学校ではどんな授業が行われているのか。

「声優コース」の授業に密着
この日「声優コース」では、生徒たちが映画の吹き替えを訓練していた。
題材としたのは2017年のハリウッド映画「スパイダーマン:ホームカミング」。
「英語では簡単に済むセリフが、日本語では説明で回りくどくなる事が多い。吹替では早口で『まいている』感じになる。急いでいると思わせず、ゆったりとした感じで『まいている』という技術を主に教えている」(声優コース講師 渡辺はなえさん)
息遣いなどをリアルに表現しなければならない。
大声を出し続ける場面では、酸欠になりそうなときもあるという。

ところで、プロの声優になるには高校卒業後、劇団や芸能事務所のオーディションを受けるのが一般的だという。
「声優の業界もどんどん低年齢化している。アニメのオーディションでも年齢制限があるなかで、高校生のうちから声優や表現の勉強ができたり声優業界に進んで行けているというのは実はものすごい武器」(特別講師 大久保皓生さん)
講師の大久保皓生さんはかつて俳優として活動していた。
今は芸能事務所に若い声優や俳優をつなぐ仕事をしている。
「事務所に所属できたといって全員が声優の仕事だけで食べられているか、正直なところそんなことはない。厳しい世界なのは間違いない。でも彼らは目指している。目指している以上、可能性は絶対ある」(大久保さん)

声優養成所目指しアルバイトも
「すずなさん」は7月、札幌市内のテレビ局を訪れていた。
「すずなさん」はHBCのオーディションに合格。
週1回放送のバラエティ番組のナレーションを担当している。

「1回目に聞いた時はびっくりしました。今の高校生はこんなにレベルが高いのかと。モチベーションが非常に高いですし、持っているものも高い」(HBC 田嶋慎一さん)

実は「すずなさん」、コンビニなどのアルバイトを2つかけもちしながら学校に通っている。
2026年春の卒業後、本州の声優養成所に入るためにお金をためているのだ。
「養成所はもっと厳しい世界だと思っている。『1回失敗したら終わりだ!』みたいな心配はあるんですけど」(すずなさん)

おなじ声優コースから北海道大会への出場を決めた「こゆきさん」。
「中学生の時に不登校になってしまい、毎日学校に行くことが卒業に必須の高校は難しいと思いこの学校にした」(こゆきさん)
2年生までイラストのコースに所属していたが、もともと興味のあった「声優コース」に2025年から編入し北海道大会への切符を手にした。

ついに本番 全国大会へ出場するのは―
いよいよ大会当日。
「こゆきさん」の演技は――
「とても透明感のある声の持ち主だと思ったんですけど、大きい声は出せます?」(特別審査員 声優・小林大紀さん)
「緊張感のある声や迫力ある力強い演技はまだまだがんばるところだなって」(こゆきさん)

控室で「すずなさん」は課題のシートに何かを書き込んでいた。
「これだけたくさんの人に見てもらえるんだというセリフに、感動した感じでの『すごい』と『ちょっと怖い』感じを混ぜたかった」(すずなさん)

会場には、娘の演技をこっそりと見に来た「すずなさん」の両親の姿も。
「司会業をするときには文言を相手に伝えないといけない。それと芝居のセリフとの違いは?」(特別審査員 声優・小林大紀さん)
「セリフを読むときは人それぞれに語りかけるイメージでやっています」(すずなさん)
1人、10分間。
本番はあっという間に終わった。

そして――
「グランプリは中村佳稟さんです!」
全国大会への切符を手にしたのは、札幌の別の高校に通う3年生。

「すごくHP(体力)は削られたけど、レベルアップした気がします」(こゆきさん)

「(高校の声優コースに入りたいと)最初に聞いた時には普通の高校に通ってもらいたいと思った。ただ本人の思いがそこまで強いなら夢がかなうようにサポートしていけば良いのかと」(すずなさんの母)

「緊張で出したいものがうまく出せなかった。セリフをもう少し大げさにやっていたら最初のセリフがきいてくるなと。もう少し場慣れをして緊張に慣れていこうと思います」(すずなさん)
目指すはプロの声優。夢への挑戦は続く。
