静岡・掛川市の教育委員会は22日、2026年度から小学校1~3年生の通知表を廃止し、面談で学習状況を伝える方針を発表した。岐阜・美濃市も導入を決め、低学年に劣等感を与えない狙いがある。通知表は法律で義務付けられていないため各校の判断に任されているという。

通知表の作成時間を面談の時間に

学期末になると渡される「通知表」。その通知表をめぐり、新たな動きが出ている。

小学校1年〜3年生までの通知表を廃止した静岡・掛川市
小学校1年〜3年生までの通知表を廃止した静岡・掛川市
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25日のテーマは「親は不安?小学校の通知表廃止。ソレってどうなの」だ。

静岡・掛川市で22日、掛川市の教育委員会が通知表廃止を発表した。

静岡・掛川市教育委員会:
2026年度は本市において、小学校1年〜3年生までの通知表を廃止し、その代わりに三者面談という形で子どもたちの学びの成果を価値付ける。

市の教育委員会は「子どもの成長を多面的に評価できることに加え、教員が通知表を作成していた時間を面談の時間に充てた方が良いと判断した」などと説明している。

徐々に広がっている「小学校低学年の通知表廃止」の動き(資料)
徐々に広がっている「小学校低学年の通知表廃止」の動き(資料)

「小学校低学年の通知表廃止」の動きは徐々に広がっている。

岐阜・美濃市では2025年の春から小学校1年生、2026年度以降は1〜2年生の通知表が廃止になる。

美濃市教育委員会・島田正紀教育長:
劣等感を感じて自信や意欲を失うことがないように、仲間関係の序列につながらないようにということが大きな目的です。

美濃市でも年に2回、保護者と個別面談を行い、学習や生活状況を口頭で伝えるほか、修了証とともに1年間の所見を書くことになった。

法的な定めはないという通知表
法的な定めはないという通知表

そもそも通知表はなくしていいのか。文部科学省によると、通知表に法的な定めはないという。

文科省:
評価の様式だけでなく、配るかどうかも含めて学校ごとの判断に任せている。通知表の廃止は各学校で判断してもらっていいが、子どもの学習の改善に繋がるよう充実したフィードバックができるかをしっかり考えてほしい。

街の皆さんは通知表の廃止について、どう感じているのか。

50代:
(将来の)道を狭めないという意味では、ありかなしだったら、すごい時代だけど(廃止は)ありかなとは思います。その子の個性が幅広く、限定されないで伸びていく伸びやかな時代に自由度は上がっていていいのかな。

30代:
(廃止で)いいと思う。評価も曖昧なところがあって、点数が低いと(子どもが)ネガティブな気分になる。「もうちょっとここ頑張りましょう」とふんわり言ってもらったほうが、本人のやる気にも通じるんじゃないか。

一方で、こんな声も上がっている。

50代:
総合的な判断は欲しいから(通知表)あったほうがいいかな。(面談は)平日になるじゃないですか。そうすると仕事の調整も難しい。

40代:
私自身はいい成績じゃなかったけど、必要だと思います。比べることによって競争心が出るんじゃないかなと思う。社会に出ても絶対にそういう場面ってあるので、将来的に。

保護者や専門家からは賛否両論の声

青井実キャスター:
低学年の通知表廃止、どう思いますか?

2023年から全ての学年で通知表を廃止した小学校
2023年から全ての学年で通知表を廃止した小学校

SPキャスター金子恵美さん:
低学年から過度に競争意識を持つ必要はないと思います。もし必要であるならば学校外、塾やスポーツクラブなどで競争意識を高めるのはいいかなと。1年生は健康に学校生活を楽しむだけでいいと私自身は思っています。

青井キャスター:
イット!は2023年から全ての学年で通知表を廃止した東京・新宿区の西新宿小学校を取材しました。子どもたちに通知表の廃止について聞くと、さまざまな意見が聞かれました。

4年生:
親からあまりゴチャゴチャ言われないからうれしい。

4年生:
(通知表)いらない!体育の評価が低かったらイヤだから。

4年生:
できるか、できないか、しっかり書いて貰った方がいいから、あった方がいいかな。

青井キャスター:
保護者の皆さんはどう感じているのでしょうか。

保護者:
初めはちょっとどうかなと思ったんですけど、いざ入ってみるとこれはこれでありかな。

保護者:
子ども自身のプレッシャーにはならないのかなとも思う。逆に私は自分で見て自分の得意な教科がいい評価だと嬉しかった記憶があるので、(通知表が)あるのはあってよかったかな。

青井キャスター:
校長先生にも通知表を廃止した理由を伺いました。

「主体的に学習に取り組んでいく姿勢を身につけさせたい」と語る長井満敏校長
「主体的に学習に取り組んでいく姿勢を身につけさせたい」と語る長井満敏校長

新宿区立西新宿小学校・長井満敏校長:
学校の勉強はどうしても「言われてやる」という部分が大きいかなと思うが、そうではなくて自分から進んで取り組む、主体的に学習に取り組んでいく姿勢を身につけさせたいなと思いました。

青井キャスター:
また、教師側も成績の処理にかけていた時間が大幅に減ったため、他の業務にも余裕が出てきたと言います。通知表を廃止して約2年、今後の課題について伺いました。

新宿区立西新宿小学校・長井満敏校長:
どういうところが伸びたのか、どういうところで頑張ったかということが、家庭・保護者に伝わるような内容に変えていきたいなとは思っていますが、なかなか難しいなと正直思っています。

変わりゆく通知表、生徒の評価は点数だけで判断されるものではないが、課題もあるようだ。
(「イット!」9月25日放送より)

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