2025年9月22日夜、鹿児島県薩摩川内市に秋を告げる「川内大綱引」が開催され、総勢3000人の男たちが熱い戦いを繰り広げた。2025年は大綱を運ぶ「綱出し」のギネス記録への挑戦も行われ、伝統行事に新たな歴史が刻まれた。
400年以上続く伝統行事
薩摩川内市で400年以上続けられる「川内大綱引」は、戦国武将・島津義弘が関ヶ原の戦いで兵士の士気を高めるために始めたとされている。市の中心を通る国道3号を会場に、日本一とも言われる長さ365メートル、重さ7トンにもなる大綱を総勢3000人の男たちが上方と下方に分かれて引き合う壮大な行事だ。
午後8時前、太鼓隊の勇ましい合図と共に「三役」と呼ばれる双方のリーダー格の3人が入場してきた。頭に鉢巻き、腰にさらしを巻いた参加者らも準備万端、“対戦モード”だ。年に一度の、男たちの熱い戦いがいよいよ始まる。

上方の逆転勝利

午後8時過ぎ、闘いの火ぶたが切られた。打ち鳴らされる太鼓は激しさを増し、会場の雰囲気はさらに熱を帯びた。
この川内大綱引、勝敗は1時間半後に綱の中心が上方と下方のどちらにあるかで決まる。序盤、白い鉢巻きの下方が戦いを有利に進め、綱の中心付近では引き手の動きを阻止しようとする「押し隊」の激しい攻防が続いた。

しかし、終了まで残り15分を過ぎた午後9時半過ぎ、劣勢かと思われた赤い鉢巻きの上方が一番太鼓の合図と共に反撃に転じた。


「ワッショイ!ワッショイ!」「せーの!」大綱は一気に上方陣地へと引き込まれ、勝負が決した。審判長の「本日の勝負、上方の勝ち!」との宣言に、上方陣営から歓喜の声が上がった。
勝利した上方の参加者は「上方が勝って良かったです。作戦勝ちです!」「最初はヒヤヒヤしていましたが、最後の逆転で気持ち良いです!」と満足そう。戦いの後は、三本締めで激闘を演じた両陣営の健闘をたたえた。

見物客に話をきくと「迫力がめちゃめちゃすごく、最後一気に引かれるところもすごい」と圧倒された様子。上方を応援していた見物客は綱の切れ端を手に「勝ちました。(綱は)家に持って帰って飾ります」と笑顔をみせた。

「綱出し」がギネス世界記録に認定
ところで大綱引で使われる綱は毎年、当日の朝、地元産の稲わらを使った荒縄を使って作られる。この作業は「綱練り」と呼ばれ、保存会や地元の高校生など約1500人もの手によって行われる。
完成した大綱を会場に運ぶのが「綱出し」。綱練りに参加した多くの市民が肩に担いで会場の国道3号まで運ぶ。
実は1年前、2024年の大綱引では、「平成の大合併」による薩摩川内市誕生から20年となった記念に、この綱出しを「綱を運ぶ最大のパレード」としてギネス世界記録に挑戦する予定だった。しかし当日は大雨。安全確保を優先するため2025年に持ち越されたのだった。

仕切り直しとなった2025年の綱出しでは市民782人が大綱を担ぎ100メートルを超える距離を移動させた。この挑戦は見事成功!「綱を運ぶ最大のパレード」として、ギネス公式認定員から保存会に認定書が交付された。
世界記録に認定され、新たな歴史が刻まれた「川内大綱引」。
その伝統は、これからも受け継がれていく。
