福岡県糸島市にルーツをもち、秋の夜長にぴったりの音色を奏でる楽器が22日、初めてお披露目されました。
秋の訪れを感じさせるやわらかな音色。
日本の木材だけで作られた弦楽器「和胡(わこ)」です。
この楽器の材料に使われているのは―
5年前の台風の影響で折れてしまった神社の御神木です。
失われるはずだった木が、なぜ楽器としてよみがえったのでしょうか。
22日午後5時半ごろの糸島市の雉琴神社です。
◆雉琴神社 武内純夫 宮司
「氏子の皆さんがどんな思いできょう聴いていただけるか、それが一番じゃないですか」
宮司の武内さんは特別な思いでこの日を迎えていました。
2020年9月、福岡県を襲った台風。
雉琴神社では樹齢300年の御神木のケヤキが根元から折れ、本殿が倒壊する大きな被害を受けました。
◆雉琴神社 武内純夫 宮司(2020年 被災直後)
「もう愕然としています」
このニュースを見て心を動かされたのが、福岡を拠点に活動するシンガーソングライター・里地帰(さとちき)さんです。
◆シンガーソングライター 里地帰さん
「(ケヤキが)この場所から無くなってしまうのは少し寂しい。1本か2本くらい楽器を作れる素材を提供していただけないかと」
宮司にそう提案し、ケヤキの一部を譲り受けました。
そうして作ったのが、オリジナルの弦楽器「和胡」です。
中国の二胡をモチーフに、日本の素材を使用、御神木のケヤキは胴やさお、糸巻きなどに使われています。
5年の歳月をかけようやく完成した「和胡」。
22日、雉琴神社の秋季大祭のあと初めての奉納演奏が行われました。
◆シンガーソングライター 里地帰さん
「ケヤキが地域の人を300年の間守ってきたという物語だったりを、音楽を通して皆さんに伝えられたら」
◆訪れた人
「心が和らいだ感じがしました。優しい音色でとてもよかった」
「(ケヤキを)こうやって活用してもらって、素敵な音色聞かせてもらって、台風も捨てたもんじゃないなって」
◆雉琴神社 武内純夫 宮司
「素晴らしい音でしたね。皆さんも集中して聴いていたので素晴らしかったと思います。目にとめていただいて(和胡を)作っていただいて、ありがたく思います」
御神木がつないだ300年の歴史は新たな音色となって、未来へと受け継がれていきます。