人口減少と少子高齢化が進む広島・江田島市で、修学旅行生を受け入れる「民泊」が累計2万人に到達した。高校生たちが体験するのは、都会では味わえない“島の日常”。近年は海外からの参加も増え、住民の活力となっている。

一般家庭で感じる“島の日常”

9月16日、江田島市で開かれた修学旅行生の歓迎式典。出席した大濱清副市長は「江田島市の人口と同じということで、来島した2万人が多いのか江田島市の人口2万人が少ないのかというのはありますけども、こうして節目を祝えるのは大変うれしい」とあいさつした。

2万人目の修学旅行生を迎える盛大な歓迎式典
2万人目の修学旅行生を迎える盛大な歓迎式典
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江田島市が2012年に始めた「民泊型の修学旅行」。コロナ禍で中断を余儀なくされたが再び回復し、2025年9月、市の人口と並ぶ「累計2万人」に達した。
節目を迎えるタイミングで訪れたのは神奈川県立海洋科学高校の2年生たち。バスから降りるなり、地域産品のお土産を前に「めっちゃうまそうやん!」と声を弾ませる。

民泊の受け入れ家庭の一つ、小田信子さんの庭
民泊の受け入れ家庭の一つ、小田信子さんの庭

大切にしているのは、島の子どもたちが普段の休日を過ごすような体験だ。
6年前に移住し、民泊を受け入れてきた小田信子さん。海が見える小田さんの庭では、大きなパラソルの下で修学旅行生が手作り料理を囲んでいた。タコの刺身や天ぷらなど地元の味に笑顔が広がり、都会の高校生が“島の日常”に溶け込んでいく。

小田さんの庭で食事を楽しむ修学旅行生
小田さんの庭で食事を楽しむ修学旅行生

「ご飯いっぱい炊きよるけん、おかわりしてね」
家庭の温もりと自然あふれる景色。小田さんの家庭で過ごす生徒たちは「自由な感じで空気が気持ちいい」「みんなと協力して揚げ物をするのは楽しかった」とリラックスしているようだ。

修学旅行だからできる民泊体験

夕食後、小田さんは生徒たちを海岸へ誘った。
「向こうに山が見えるでしょ。あれは宮島。山を越えた向こう側に大鳥居がある」

江田島の砂浜でサンセットを楽しむ修学旅行生
江田島の砂浜でサンセットを楽しむ修学旅行生

もうすぐ日が沈む。夕焼け色に染まる海が目の前に広がっていた。
「おまえら、ポーズ決めろ!」
この瞬間を撮影する生徒たち。離島の砂浜から見る夕暮れも都会では“非日常”だ。

昨年まで北海道を訪れていたこの高校が、今年から2泊3日で江田島を選んだ理由が「民泊体験」だった。

神奈川県立海洋科学高校の竹内竜登教諭は「大人になって旅行する際はホテルが中心になる。民泊は大人が生徒に体験させないとなかなかできない。一生記憶に残るいい思い出にしてほしい」と話す。

受け入れた住民も「元気になれる」

江田島市は、民泊が生み出す交流が地域の活力につながっていると強調する。

受け入れ家庭の小田さんは「楽しいですよ、皆さんに勧めています。元気になれるんです」と笑顔を見せる。

近年は海外からの修学旅行も増え、昨年はフランスの高校生が訪問。「餅つき」など日本ならではの風習も体験した。今年、その評判を聞いた別のフランスの高校からも参加が予定されている。

近年、海外からの修学旅行も増加(提供:江田島市)
近年、海外からの修学旅行も増加(提供:江田島市)

取材を担当した記者によると、今回の修学旅行生の中には「卒業後は江田島でカキ養殖に携わりたい」と語る生徒もいたという。全国有数のカキの産地でありながら人手不足が課題となる中、こうした体験をきっかけに若者が移住し、島の未来を担う存在になることが期待される。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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