一般的な企業や公務員と比べて定年が早い自衛隊。こうした中、退職する自衛官に熱いまなざしを向けるのが運輸業界だ。そのワケとは?
官民が協力してバスの運転体験会
国土交通省の呼びかけにより自衛隊と富士市にあるタクシー会社が共同で開いた運転体験会。

参加しているのはいずれも2026年に定年を迎える自衛官12人で、ほとんどが大型バスの運転は初めてということだったが、任務を通して大型車両の運転には慣れているとあってすぐにコツをつかんだ様子だ。

シンフジハイヤーの三澤賢治 社長は「こんなすばらしい人材はない。もし採用できるなら全員採用したい」と笑顔で話す。
任務で取得したスキルを活かす第2の人生
自衛官の定年年齢は階級に応じて55歳から60歳となっており、一般企業や公務員と比べて早く、第二の人生に向けては再就職が欠かせない状況にある。
一方で慢性的な人手不足が悩みの種となっている運輸業界。

静岡県内でも、バス会社が説明会を兼ねた運転体験会を開くなど人材の確保や発掘に向けた取り組みが進められている中、国土交通省では2024年から防衛省との連携を始め、2025年7月には退職した自衛官の雇用拡大に向けて運輸や観光に関係する業界団体に協力を依頼した。
こうした中で開かれた今回の運転体験会。
参加した自衛官に運転を指導していた大塚雅勝さんも元自衛官だ。
大塚さんが再就職したのは1年前。
現在はスクールバスや貸し切りバスの運転を担っている。

「ずっと車を運転するのが好きで、自衛隊が終わった次の職業も車関係でやっていきたいなと思った」と話す大塚さんは現役自衛官の時代に任務を通じて大型免許や大型特殊免許を取得。
さらに再就職後、観光バスなどを運転できるように会社の支援を受けて大型の2種免許も取った。
異業種への再就職というと最初は苦労しそうだが、「私も自衛隊で大型を乗っていたので、そんなに難しく考えなくても先輩たちが丁寧に教えてくれて、すごく楽しくやっている」と充実した表情をのぞかせる。
退職自衛官は人材の宝庫
大塚さんが再就職したシンフジハイヤーの三澤社長は「規律を今まで守ってきた人たちなので、ルールは守るし挨拶もする。人間的に素晴らしい。退職自衛官は人材の宝庫」と今後も退職自衛官を積極的に採用したい意向を持っている。

2025年度に定年を迎える隊員は陸海空あわせて8100人に上ると言われている自衛隊。

人手不足に悩む業界と様々なスキルを持つ退職自衛官とがWin-Winの関係になる体制の構築が求められている。
(テレビ静岡)